森博達『日本書紀の謎を解く-述作者は誰か』など
下記の書籍を読んだ。
森博達
日本書紀の謎を解く-述作者は誰か
中公新書(1999/10/25)
ISBN-13: 978-4121015020
森博達
古代の音韻と日本書紀の成立
大修館書店 (1991/7/1)
ISBN-13: 978-4469220810
これまでずっと独学であれこれやってきたのだが,これらの書籍を読んで,自分が何をやってきたのかを理論的に整理することができた。とてもありがたい。
これらの書籍に書かれている理論それ自体については別の書籍で読んで知っていたが,理論そのものについて真面目にちゃんと勉強したいと思って読んでみた。
読後感としては,相当強い興味をもってかなり専門的なことでも何でもかんでも乗り越えようと苦心を重ねた後でないと理解できないことが多いかもしれないと思う。しかし,『古事記』と『日本書紀』を何度か通読した上で,これらの書物を通読した人なら誰でも疑問に思うような部分を考え続けた経験を有し,かつ,偏見のない人なら比較的容易に読みこなせるだろうと思う。
結論は明確だと思う。ただ,その理由づけについては,単に理論を暗記しただけでは理解できない部分があるからだ。α群やβ群については,理論それ自体を覚えても他人に明確に説明できるわけではない。『日本書紀』や『万葉集』それ自体のテキストの熟読玩味による蓄積を要する。
しかし,苦心惨憺しながら長年の努力を積み重ねた人にとっては大きな福音になるだろうと思う。
素晴らしい業績だと思う。
森博達氏の別の著書も読んでみることにした。
(余談)
『万葉集』の中にはほぼ漢文と推定して読んだほうが良い歌が含まれているとの仮説をたて,ちょっとだけ「『楚辞』の蘭」の中で検討結果を書いた。私見について,上古音韻学上の理論的な裏付けを得ることができたような感じがして,とても嬉しい。
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