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2016年2月 3日 (水曜日)

Christoph Baumer, The History of Central Asia - The Age of the Steppe Warriors

Amazonに注文していた下記の書籍が届いた。海外からの取り寄せなのだが,これまで受領した書籍の中で最も厳重にパッキングされていた。驚嘆のパッキングだった。

 Christoph Baumer
 The History of Central Asia - The Age of the Steppe Warriors
 I. B. Tauris (December 11, 2012)
 ISBN-13: 978-1780760605

大型本で,とても詳細な写真と論説がぎっしりと詰まっている。夢中になって読んだ。

古代の中央アジア史に関する新しい書籍として,現時点で,世界最高峰の座にある書籍だと思う。早速,続刊『The History of Central Asia - The Age of the Silk Roads』を注文した。届く日が楽しみだ。

本書で述べられている内容は多岐にわたり,ケルトやスキタイとの関係については特に詳しい。現在では蒙古族との混血によって東アジア人的な容貌をもつ人々が増えているとはいえ,基本的には印欧語族によって構成されていた人々だったのだろうということがよくわかる。

特に注目したのは,169頁にあるカザフの鷹匠の写真だった。これは,1900年ころに撮影された白黒写真なのだが,帽子は,芝山古墳の埴輪にある「つば」のついたとんがり帽子とうり二つのもので,まさにこの帽子だったのだろうと思う。帽子だけではなく,服装の特徴もほぼ同一とみてよいので,少なくとも1900年頃まで存続していたカザフの鷹匠の装束をそっくりそのまま土製品の人形にしたものが芝山古墳の埴輪と断定してよいと思う。問題は,その顔なのだが,豊かに鬚をたくわえたコーカソイド的な遺伝子を圧倒的に多く含むモンゴロイドだろうと思う。要するに混血だ。現在の日本人の中にもこのような欧州人的な印象を強く受ける人は多数存在しており,私の親しい知人の中にもいる。その知人は,まさに芝山に近いところの出身なので,おそらく,芝山古墳の王だった人の子孫なのだろうと思う。

なお,この写真の男性は,腰に猟銃をつけている。その猟銃の銃身部分には銃剣のような刃物がついている。古代においては,猟銃ではなく太刀か小型の槍のようなものをつけていたのに違いない。

本書の190頁には現代の鷹匠の騎馬姿のカラー写真があるが,帽子には「つば」があるものの頂点がへこんでおり,尖っていない。現代では尖った部分が変化してしまっているのだろうと推定されるけれども,おそらく,モンゴル帝国が進出するまでは基本的に全部(「つば」のある)とんがり帽子だったのではないかと思う。

また,本書の171頁には,女性と思われる人物の頭部像がある(死者である女性の顔にかぶせたマスクではないかと推定され,容貌的にはモンゴロイド的な要素が強い。)。これは彩色のあるもので,刺青なのか朱で描いたものなのかは不明だが,たぶん古代のピクト人の彩色もこのようなものだったのではないかとの想像をかきたてるものだ。日本の古墳から出土する埴輪の中にも類似の形状と色あいの彩色のあるものがある。

今後は,これらの資料を参考にして,コーカソイドとモンゴロイドの混血的な要素を格別に濃厚にして日本の埴輪の実物復元を試みるべきだと考える。

本書のすばらしさは比類のないものなので,日本の主要図書館では必備とすべきだろう。

これ以外にも本書のどの頁を読んでも勉強になることばかり書いてあった。更に読書を重ねて知識をより正確なものとしたいと思う。

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