Thomas K, Clancy (ed.), Cyber Crime and Digital Evidence - Materials and Cases (2nd edition)
昨年,下記の書籍を購入し,昨年中に読んだ。
Thomas K, Clancy (ed.)
Cyber Crime and Digital Evidence - Materials and Cases (2nd edition)
LexisNexis (2014)
ISBN 978-1-6328-0915-5
サイバー犯罪と関連する電子証拠について述べた書籍としては,現時点で最も詳しいものではないかと思う。この分野の研究者にはお勧めできる。
サイバー法,インターネット法,情報法等の名称で様々な書籍が刊行されており,一応手に取って読んでみることが多い。
しかし,感心しないものが少なくない。
それぞれ立論は自由なのだが,法執行という観点が欠落していて全く役立たずのものがあるからだ。その原因としては,著者が「証拠」や「証明」の本質を全く理解していないということがあるかもしれない。そういうものでは単なる空理空論に堕してしまう。
法解釈学は,法制度を対象とする学問である以上,現実的な「執行可能性」という観点を欠くと,学問として成立しなくなる。成立していないのに法解釈学だと称する行為は,場合によっては詐欺類似行為となる。
法哲学であれば別なのだが,その場合には,実定法とは無関係の法哲学として執筆し書籍を刊行すべきものだろうと思う。
本書は,米国のケースメソッドを前提にしているので,判例法の何たるかについて基礎的な素養がないと理解できない部分もあるかもしれないが,判例に示された規範のようなものを考究することは日本国の法令の解釈上でも大きな有用性がある。
判例法である以上,現実の事件を前提にして法の適用を論じているので,架空の事例を想定した空理空論よりもはるかに大きな有用性をもっているのではないだろうか。
読者が個々の判決の中から一般法則や一般原理を抽出するのにはそれなりの専門知識と技能と訓練を要するので,一般向けの書籍ではないが,少なくとも米国のロースクールの学生はこの程度の書籍を読みこなし理解した上で弁護士になっていくので,日本の法科大学院の授業内容の粗末さを嘆くような気持ちしかわいてこない。
日本国でもどうにかできないかと考え,米国流のやり方も加味しながら「サイバー犯罪の研究」を書き続けている。連載8回目がまもなく刊行される(形式的な刊行日は2015年12月だが現物はまだ届いていない。)。2016年中に連載9回目を刊行する予定で準備している。
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