Shostak, Exposed Science - Genes, the Environment, and the Politics of Population Health
下記の書籍を読んだ。
Sara Naomi Shostak
Exposed Science - Genes, the Environment, and the Politics of Population Health
University of California Press (2013)
ISBN-13: 978-0520275188
著者は,科学社会学(Ssience sociology)という分野を専攻する人らしい。
内容は,辛辣と言えば辛辣なのだが,かなりまともで重要な指摘に満ちている。読んでみて,いといろと考えるところがあった。
日本の法学では,環境法と医事法が分離している。これは,ものごとの本質に迫る研究者の誕生を阻止するための制度的枠組みだろうと思う。横断的に研究しようとすると,干されるまではないにしても研究予算を全くもらえなくなる。
日本でも米国でも,要するに,金儲け主義が人々の安全や健康よりもずっと優先されているということに尽きる。政府としても名目GDPをとにかく増加させないと,国の借金とのバランスが名目上でも損なわれていることが露見し,財政政策を一切行えなくなってしまうので,架空のものだと熟知していてもGDPの増加にこだわり続けるしかないという状況にある。このようにしてしまったことには,へつらいしか知らないタイプの経済学者や財政学者等に重大な責任があるのだが,彼らが切腹して果てることはあり得ない。
結局,社会における公正や正義といった概念が観念的なものに過ぎず,現実は正反対だということを思い知らされる1冊ではある。
立場により賛否両論があり得ると思う。
しかし,大事なことは,本書の指摘に反対しようがどうしようが,その反対の論者自身も,例外なく,土や水等の外的環境から身体内の内的環境への深刻な汚染の浸透という事実から逃れることができないということだ。既に相当汚染されている。
推測だが,一見清潔そうで快適そうな都市やリゾートにばかり住んでいる人々の汚染度はそうでない人々と比較して,意外と高いのではないかと思う。無論,田舎でも農薬等の化学薬品,遺伝子加工人工生物の栽培,肥料等に含まれる放射性物質等による環境汚染が相当進んでいるので,程度差に過ぎないのだが・・・
人類の未来は,非常に暗い。
(余談)
遺伝子組換え作物について,従来考えられているのとは異なる遺伝子汚染ルートがあり得ることを指摘した部分を含む論説原稿を書いたのだが,公刊されるかどうかは未定。まだ査読結果が返ってきていないのだが,もし査読ではねられた場合には,仕方がないので,別の方法で公表しようと考えている。
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