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2016年1月17日 (日曜日)

茂木雅博『箱式石棺(付・全国箱式石棺集成表)』

Amazonで予約注文していた下記の書籍が届いたので,早速読んだ。

 茂木雅博
 箱式石棺(付・全国箱式石棺集成表)
 同成社(2015/12/24)
 ISBN-13: 978-4886217158
 http://homepage3.nifty.com/douseisha/kouko/kohunn/kohunn.html#hako

本書は,日本国内で発掘された石棺を全て整理・分類して一覧表を作成し,それに基づいて考察した結果を示すもので,たいへんな労作だと思う。この分野を専攻しているわけではないので,本当に漏れなく全て収録されているかどうかを確認するだけの能力をもちあわせないが,たぶんほぼ全てのものが収録されているのだと思う。

本書の大部分を図版と表が占めているので,論説部分をざっと読んだ。

冒頭にある定義と研究史に関する部分を読んでいて,文学部の考古学専攻科で講義を受けているかのような錯覚に陥った。知識がきちんと整理されており,これまでの研究がどのようなもので,何が問題であり,どのような研究をすべきかが明確に示されている。

それに続けて箱式石棺の分布に関する論述がある。この部分を読むだけで,何となく古代の歴史のマクロ的な姿が脳裡に浮かんでくるのだが,更に続けて箱式石棺の構造と副葬品に関する論述部分を読んでいると,否が応でも古代中国における棺のことを思い出し,所蔵する関連書籍と比較しながら読み進めた。

そして,そのあとに,付論として,古代中国揚子江流域における箱式石棺との比較検討がある。ここでもまた,古代中国の江南の文化の影響が非常に濃厚であることを理解することができる。

論述部分は,全体として,客観的な叙述にとどめる抑制的なもので,思い切った推論や空想等は全くない。推論に類するものは,客観性をもった合理的なものの範囲内に収められている。

著者の学者(研究者)としての謙虚な基本姿勢のようなものを窺い知ることができる。

良い書籍だと思う。

本書の資料価値としては,現時点で存在する類書の中でずばぬけて秀でているのではないかと考える。

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