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2016年1月17日 (日曜日)

水野正好・白石太一郎・西川寿勝『増補版 邪馬台国-唐古・鍵遺跡から箸墓古墳へ-』

下記の書籍を読んだ。

 水野正好・白石太一郎・西川寿勝
 増補版 邪馬台国-唐古・鍵遺跡から箸墓古墳へ-
 雄山閣(2015/10/26)
 ISBN: 9784639023760
 http://yuzankaku.co.jp/products/detail.php?product_id=8258

本書の初版は2010年11月15日に刊行されたもので,2009年9月29日に奈良県田原本町弥生の里文化ホールで開催されたシンポジウムにおける講演と討論を収録したものとのことだ。その後,新たな発見等に基づいて改訂・増補されたのが本書ということらしい。

「邪馬台国」を「ヤマト国」と読むべきことについては,水野正好氏の説くとおりだと思う。『隋書』の時代に決着済みの問題だとの指摘は,まことにそのとおりだと言うしかない。

全体を精読してみると,西川寿勝氏の改訂・増補による部分が多い。いずれも説得力のあるもので,納得度の高いものだと思う。特に,唐古・鍵遺跡の文物が,朝鮮半島ではなく,中国の江南から直接渡来した文化の影響が高いとの指摘は,最近の考古学上の発見や遺伝子解析等によっても強く支持されるところで,ほぼ間違いのないものではないかと思う。

ただし,唐古・鍵遺跡出土の金属製品の製造年代について「晋」と推定している部分については再検討の余地があるのではないかというような感じがする。文化的には江南のものだろうと思われるのだが,晋ではなく呉または蜀の中で魏(晋)の支配下に入った地域に居住していた職人等が製造し,山東半島経由で中国大陸から直接に渡来したものではなかろうか。

西川寿勝氏の論述の中で,神武系と卑弥呼系とでは系統が異なるかもしれないとの指摘は,私もそうではないかと思う。古来,「王」と「将」とは異なる社会的役割を果たしており,ときとして一致することもあるけれども,通常は異なるものだというのがいわば定説になっている。新井白石も『読史余論』の中で天皇による親征は稀なことだという趣旨の表現を用いることによって,そのことを述べている。今後は,そういう観点からの解析も必要になるのではないかと思う。

増補部分にある水野正好氏と西川寿勝氏の論説部分も「なるほど」と思いながら読んだ。

更に勉強を重ねようと思う。

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