横地勲『古代の光通信』
下記の書籍を読んだ。
横地勲
古代の光通信
図書出版のぶ工房 (2004/12/24)
ISBN-13: 978-4901346542
古代において銅鏡を用いた光通信が行われていたのではないかとの仮説をたていろいろと考えてきたのだが,同じようなことを考える人が存在することを知り,驚いた。書店でみつけ,購入して読んでみた。
本書においては,修験道を行う者が通信適地となっている山頂等で光通信を行ったのではないかとの仮説をたてている。
光通信とその実証実験に関する記述は比較的短く,主に神宮皇后=斉明天皇説の考証とそれを補強するための天武天皇=風水師説を述べている部分が多い(神宮皇后及び天武天皇に関する仮説は(細部を別とすれば)あり得ることだと思う。日本の道教を確立したのが日本国の正史の上で天武天皇とされている誰かであることはほぼ間違いないことだろうと思う。)。
一般に,現在の社会環境の下で鏡による光通信実験をしようとしても,山々に(植林による)木々が生い茂っているため,よほど条件に恵まれていない限り,現実には実行できない。
山々の頂上には木々がなかったと推定することは可能だと考える。製鉄や造船のために乱伐が繰り返され,日本国全土においてほぼ裸の山ばかりになっていた可能性さえある(森勇一『ムシの考古学』には,江戸時代において乱伐があったことが示されているが,考古学上の発見によれば,古代においても,例えば古代の多賀城周辺の植生変化の研究成果等によって,同じようなことがあったことが知られている。)。そのような条件下では,銅鏡による光通信は可能だ。そこで,山々が裸の状態になっていると仮定して,コンピュータによるシミュ―レーションをしてみたいと思いながら,かなり老人になってしまった。誰か若い世代に譲りたいと思う。
なお,本書においては,九州~瀬戸内~畿内の範囲内での光通信を想定している。しかし,東海地方~関東地方にも「鏡石」といった地名が多数残り,亀石も残されている。当時の海水面は現在よりも高かったと推定され,現在では内陸にある古墳でも当時は海岸にそびえ立っていたものが多数あると推定されることから,それらについて海水面の補正をすれば,光通信が可能かどうかのシミュレーションを実行することもできるだろうと思う。
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