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2016年1月30日 (土曜日)

阿迪力・阿布力孜編『新疆古代服飾芸術』

下記の書籍を読んだ。

 阿迪力・阿布力孜編
 新疆古代服飾芸術
 新疆美術出版社(2008/12)
 ISBN-13: 978-7807445203

新疆ウイグル自治区で発掘された衣服等を総合的に検討した書籍だ。白黒だが写真も多数収録されている。

私が入手したものは2009年11月に重版となったものだ。この種の書籍としては異例と言っても過言でないほど売れている書籍ということなのだろう。

本書の1~7頁には,帽子について解説がある。千葉県の芝山古墳等から出土したとんがり帽子埴輪と同じような「つば」のあるとんがり帽子の実物が多数発掘されているようだ。つまり,芝山古墳の埴輪の帽子は,胡人のものとほぼ断定してよいと思われる。

本書に示されているのと同じような「つば」のあるとんがり帽子は,アジア考古学四学会編『アジアの王墓』(高志書院,2014)の284頁に図CとしてSpindlerの著書から引用するかたちで示されているから,古いケルトの帽子と同じものと推定することができる。要するに,ケルト人(スキタイ人)の中には,フェルト製のとんがり帽子をかぶっていた種族が含まれると考えることができ,その一派が中国にも及んでいたと推定することができる。早速,Spindlerの原書を注文した。到着したらしっかりと読んでみようと思う。

本書(『新疆古代服飾芸術』)の8~21頁には髪型に関する記述がある。角髪(みずら)と推定されるものもあり,また,スキタイの女性特有のものではないかと思われる高く棒のように結い上げた髪型もある。特に注目したいのは,本書11頁にあるホータン(和田)地区砂漠で発見されたという石像で,これは,エジプトの女性像だと言われても「そうか」と思ってしまうくらい見事にエジプト的なものだ。エジプト人の集団が中国に移動していたことは疑いがないだろうと思う。私見では,古代のエジプト人の技術者がピラミッド型の巨大王墓(秦や前漢の王墓)をつくったのではないかと思う。

本書の22~30頁には,顔の化粧について書いてある。日本の埴輪にも朱で化粧したものがあり,『魏書』の倭人伝等にもそのような記述がある。また,古代ケルトのピクト人は化粧または刺青をしていたと推定されることから,ケルト系(スキタイ系)種族に広くこのような習俗が存在していたと推定される。南回りで移動した古代ケルトの人々は,東南アジアや中国の江南でも豊富な植物性顔料や鉱物性顔料を用いて化粧の技術を多彩に開花させたのだろうと思う。

以上のほか,どの頁をひらいても勉強になることが多かった。もっと早くこの書籍と出逢いたかった。

本書は,日本の埴輪に興味をもつ人を含め,古代に興味をもつ人全てに是非ともお勧めの一冊と言える。カラー写真による日本語版が出版されることを期待したい。

(余談)

芝山古墳に限らず,日本の古墳にある埴輪の中には,とても日本で発生したものとは思われないものが多々あり,このブログでもときどき書いてきた。

巫女とされる埴輪で頭に板状のものをつけているものがあるが,これは,「冕冠(べんかん)」だろうという推定でほぼ間違いないと考えている。同様の結論を示す見解が既にあるようなので,目下,関連書籍を探索中。

芝山古墳の埴輪のとんがり帽子は,きっと古代ケルト(スキタイ)に比較的普遍的に存在したものだろうと考える。

要するに,日本の古墳の主とされる王の中には,ユーラシア大陸から移動してきた馬を使う一族(高度な武器で武装した集団)のものが少なからず含まれている。それを「騎馬民族」と呼ぶかどうかは趣味の問題に属するかもしれない。大事なことは,「そのような文化が日本で独自に発生し得るものかどうか」という一点に帰着する。この大事なポイントを重視せず,些末なことにこだわって悪あがきしているような書籍や論文等を多数読んだが,ほぼ無意味な努力ではないかと考えている。誹謗中傷と受け止めらると困るので,専門外のものについては,しっかりと読んでいてもブログでは触れないようにしている。

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