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2016年1月24日 (日曜日)

湖北省博物館編『曾侯乙墓文物珍賞』

下記の書籍を読んだ。正確には,図録なので,写真を見て,その解説文を読んだ。

 湖北省博物館編
 曾侯乙墓文物珍賞
 湖北美術出版社(1995/5)
 ISBN: 9787539405834

この遺跡は非常に有名な遺跡で,古代の青銅器の宝庫となっている。

特に有名なのは,「編鐘」と呼ばれる銅鐸のような釣鐘状の青銅器を多数並べた楽器だ。

いずれも古代ケルトのハルシュタット期とラテーヌ期の文化との類似性を有するもののように思う。

特に,「編鐘」の支柱部分の青銅器には人間が両手をあげて支え持つ形状が示されている。これは,ホッホドルフの遺跡から発見された青銅製の寝台の支柱部分にも人間が捧げ持つ形状が示されており,偶然の一致とは考えにくい。おそらく,この形状のルーツは古代エジプトにあり,古代のエジプト,ケルト,中国の間には文化的な連続があるか,または,何らかの交流があったのではないかと推定される。

建鼓と呼ばれる太鼓の支持台と推定される複雑な形をした青銅器をよく見ると,古代ケルトのラテーヌ期の渦巻き紋様または蛇様の動物紋様を立体化して組み合わせたものだということを理解することができる(「ダロウの書」の福音書カーペット頁が参考になる。)。

従来,古代中国の文物については特殊性が強調され過ぎて,文化的な連続や相互の影響等についてはあまり明確に意識されてこなかったのではないかと思う。しかし,ケルト(スキタイ)の影響が濃厚と思われる文物は多数あるし,春秋戦国時代~秦・前漢(西漢)のころには明らかにアレクサンドロス大王の東征の影響と思われるヘレニズムが及んでいたと考えざるを得ない。

いわゆる「四大文明」なるものは,空虚に独自性を誇示して偏狭な民族主義に陥るのではなく,ユーラシア全体の相互関係の中でとらえ直すべきものだろうと信ずる。

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