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2016年1月30日 (土曜日)

米田該典『正倉院の香薬-材質調査から保存へ』

下記の書籍を読んだ。

 米田該典
 正倉院の香薬-材質調査から保存へ
 思文閣出版 (2015/10/22)
 ISBN-13: 978-4784218219

非常に勉強になった。

理解を容易にするために表などが効果的に用いられており,とても助かる。

通読して,奈良時代~平安時代における「香」の文化のアウトラインを理解できたように思う。

そして,従来の通説が考えているような貴族の「香」=「藤袴」=「フジバカマ(Eupatorium fortunei (旧説ではEupatorium japonicum))」という図式は,他に物的証拠が存在しない限り成立せず,文学者の観念的な空想にとどまるものと思われる。

万葉集を含め,日本文学は根本的なところで全面的な見直しを求められていると考える。

私見によれば,自然科学上の知見と矛盾しないように文学上の解釈を構成する実証的文学論という手法へと移行すべきだと思う。

(余談)

仮説の段階にとどまるが,フジバカマ説は,主として江戸時代に形成されたものだと考える。

当時の中国から高級香料としてフジバカマの類が大量に輸入され,その販売促進のために『源氏物語』や『万葉集』の版本が出版され,その講釈が普及したものだろうと思う。

(余談2)

本書の中には何度か毒草イケマの話題が出てくる。

特別の薬草として,他の香木等とは別の器に入れて保管されてきたものらしい。

本書では,その使用目的を謎としている。

私は,高貴な人物を暗殺する必要が生じたときに毒薬として用いるために保管されてきたものだと推定する。

なお,トリカブトの可能性も留保したまま更に研究を深めようと思う。

いずれにしても,『養老令』の実質を考察する場合,更に詳しく植物学と関連する探究を続けなければならないことだけは明らかだろうと思う。考古学上の発見が続いているので,それらと結合し,より合理的な推論を構築することが可能かどうか考察を進めたいと思う。

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