殺人ロボットは数年後に完成する?
下記の記事が出ている。
殺人AIロボット開発阻止を訴え、ダボス会議で科学者ら
AFP BB: 2016年1月23日
http://www.afpbb.com/articles/-/3074300
'Stop killer robots before it's too late': Experts warn the world must act quickly to prevent machines rising up and killing us
Daily Mail: 22 January, 2016
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-3412098/Stop-killer-robots-s-late-Experts-warn-world-act-quickly-stop-machines-rising-killing-humans.html
何とのんびりした人々だろうとあきれる。既に存在している。
全ての人間について平等に「生存権」を肯定すると必然的に殺し合いが生ずるというパラドックス的なメカニズムに関しては,「艸-財産権としての植物(2)」の脚注内で述べた。この論理矛盾は資源の有限性によって発生する。仮に資源の有限性という制約が存在しない場合,需要と供給とのアンバランスから生ずる「利益」というものの発生原因も存在しないことになるので,資本主義社会は消滅するという別のパラドックスに陥る。
(余談)
殺人ロボットが人間型(ヒューマノイド)である必然性は全くない。最も効果的により多数の人間を殺せるように設計すると,むしろ,必然的に,人間型ではなくなる。
にもかかわらず,人間型殺人ロボットを想定してしまいがちなのは,そのような人々が古典ギリシアにおける観念及び『旧約聖書』にとらわれた脳構造をもっているからではないかと推定している。
古典ギリシアにおいては,人間型の神像をもたないケルト人等を蛮人(バルバロイ)と呼んで蔑視した。しかし,ギリシアを侵略したケルト人の一派はデルフォイ神殿の人間のような神像を目にして嘲笑したのだという。彼らは,精霊のような目に見えない存在を抽象的に認識・理解することができず具象的なものしか信じることのできないギリシア人をとんでもなく知能の劣った蛮族だと考えたのだろう。
『旧約聖書』の「創世記」において,神は自分の姿に似せてアダムを創造したのだという。それゆえ,人間の「かたち」こそが最も神に近い完成されたものだとの信念が生まれることになる。
しかし,地球上で最も長く繁栄を維持しているのはウイルスのような極めて単純な構造をもった生物のような有機体達だ。これらの有機体達は,地球が惑星衝突によってバラバラになっても宇宙空間を浮遊し続け,どこか別の惑星に降り,そして,その惑星でその遺伝子を存続させ続けるかもしれない。その惑星には,人類は存在しないかもしれないが,きっと別の神が住んでいる。
要するに,基本的なことを考える場合には,いったん「人間至上主義(ヒューマニズム)」を完全に忘れ,全て即物的に考えてみる必要がある。
その上で,もし人類を存続させたいのであれば,どのような統制装置を構築するのが合理的かを考えるのが正しいという結論になりそうだ。
ベンタムの思想は,このような発想に近いものだろうと思う。
ただし,現在の人類がそれぞれ自分にとって都合のよいように恣意的に解釈している「生存権」や「自由」なるものとは相当ひどい乖離を生じさせることになるだろう。それゆえ,ベンタムの思想は,基本的に嫌われることになる。
こういうわけで,それぞれの立場があるので,どれがよいとか悪いとか決めつけることはできないのだが,そういうことを踏まえた上で,やはり,殺人ロボットがヒューマノイドであるべき必然性は全くないということを明確に認識しておくべきことだけは誰も否定しようがないのではないかと思う。
殺人装置は,例えば,(北欧神話のトールのハンマーのような)雷そのものであっても良いので,神の姿に似ている必要は全くないのだ。
それゆえ,私は,2014年に開催された情報ネットワーク法学会のシンポジウムにおいて,円を3つ組み合わせた図だけを用いて自説を述べた。このシンポジウムの内容は,『情報ネットワーク・ローレビュー講演録編-第14回研究大会講演録』に収録されている。
奇しくも,この3要素による理解は,ジョルジュ・デュメジルの3要素説とも一致していることに後になってから気づいた。
先に気づいていれば,ジョルジュ・デュメジルを引用してもっと格好良く権威ありそうに話すことができたのに・・・と思う(笑)
明らかに大幅に勉強不足なので,更に読書を重ねようと思う。
[追記:2016年1月26日]
関連記事を追加する。
If killer robots arrive, the Terminator will be the least of our problems
Washington Post: January 25, 2016
https://www.washingtonpost.com/news/innovations/wp/2016/01/25/if-killer-robots-arrive-the-terminator-will-be-the-least-of-our-problems/
映画『ターミネーター』における人類抹殺というコンピュータ(人工知能)の判断は理論的には正しいということは,1997年に刊行した『ネットワーク社会の文化と法』で書いたとおりだ。人類の中でも特に支配的地位を占めている人々がその生存のあり方を根本的に変更しない限り,この結論を修正することができない。したがって,現状を前提とする限り,どのようにあがいても,なるようにしかならない。
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