夏井高人「『楚辞』の蘭」
昨年9月に書いた論説を収録した雑誌がやっと刊行された。昨日,届いた。
『楚辞』の蘭
やまくさ66号81~183頁
この雑誌は,東京山草会の会員に会誌として配布される。
目次構成は,下記のとおり。
1 『楚辞』について
1.1 『楚辞』の成立
1.1.1 『楚辞』の典拠
1.1.2 成立年代と作者
1.1.3 芸術的価値
1.1.4 日本の古典文学との関係
1.2 『楚辞』における「蘭」
1.2.1 藤袴
1.2.2 佩蘭と白頭婆
1.2.3 蘭花の可能性
1.2.4 その他の植物の可能性
1.2.5 本稿の目的
2 『楚辞』の「九歌」について
2.1 語としての「九歌」の意義
2.2 『楚辞』の中における「九歌」の位置づけ
2.3 「九歌」の構成
3 『楚辞』の「九歌」にある「蘭」の検討
3.1 禮魂
3.2 東皇太一
3.3 雲中君
3.4 湘君
3.5 湘夫人
3.6 少司命
4 まとめ
この論説は,5年間続いた大型研究(研究代表:中山信弘氏)の研究成果の一部として書いたものだ。
従来の学術研究においては,「他分野の研究成果は正しい」という前提で何ら検証することなくそのまま受け入れて法理論だけを検討してきた。その結果,情報財の研究分野においても,前提に誤りがあるのにそれを正しいものとして法理論を構成するといったようなことが多々あった。同様のことは裁判でも存在し,刑事事件では冤罪事件と呼ばれる。
裁判官経験者であれば,学術も証拠によって証明されるべき事実を前提にして構成されるべきものだということは自明なのだが,そうでない研究者には必ずしも自明ではないかもしれない。
論文においても,証拠によって認定可能な事実と推論に過ぎないものとは明確に分けて書くべきだと思う。しかし,現実には,単なる受け売りだけで書いており,前提となるものの真偽をきちんと検討した上での立論ではないものも散見される(←自省の念をこめて。)。
そこで,研究素材として採用しても比較的問題とされにくい素材だろうと思って植物を選択し,実際に栽培・観察・分析しながら研究を重ねてきた。ところが,予想に反して問題だらけだということが判明した。ほぼ全学術分野にわたりその影響は及んでいる。
研究成果については,どんどん書いて公表してきた。しかし,全てを書ききることはできていない。
その研究成果を全部まとめきるまでにはあと数年を要するかもしれないが,自分の能力の限りを尽くし,やれるだけのことはしたいと思う。
この研究に関して多額の研究費(主として書籍購入費)を分けていただいた中山信弘先生には,心から感謝を申し上げる。
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