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2016年1月28日 (木曜日)

周慧編『中国北方古代人群線粒体DNA研究』

下記の書籍を読んだ。

 周慧編
 中国北方古代人群線粒体DNA研究
 科学出版社(2010/12)
 ISBN13:9787030297136

一般に,遺伝子解析は現在でもそう簡単なことではないし,エラーが混入することや解析結果の解釈に誤りのある場合もあり得る。本書における解析結果が適正・妥当なものかどうかを判断するだけの技術的能力をもちあわせていないのだが,とりあえず,解析結果に大きな間違いはないという前提で読んでみた。

サンプルは,新疆ウイグル自治区の砂漠地帯で発掘されたミイラ,内蒙古,青海,山西等で発掘された遺体で,拓跋鮮卑及び契丹に関する検討もなされている。

読んでみて,明確に結論を述べていない部分があり,論調全体に統一性がないようにも思われる。その原因はわからない。

新疆ウイグル自治区で発掘されたミイラ等の解析結果として欧州人(印欧語族・ケルト(スキタイ)?)に近いとの推定がなされている部分や,契丹(キタイ)と日本人との関連性について示唆している部分などを興味深く読むことができた。

全体としてみると,どのサンプルでも混血があったということが示されているように思う。

ところで,日本人と比較するという場合,日本人それ自体が混血人種なので,一体どのサンプルをもって日本人の標準とするかという問題がある。へたをするとどうどうめぐりの議論となり得る。

なかなか難しい。

(余談)

文献資料を読んで考える限り,周の西方の諸族と秦と匈奴の西側諸族との間には密接な関連があるように思う。もしかすると同一民族かもしれない。支配階級は印欧語族だったと推定され,長い年月をかけてモンゴロイドとの混血が発生したのではないかと思う。

ただし,現在あるようなモンゴロイドの姿になったのは,元~清以降のことではないかと思う。とりわけ,中国北方における漢民族と類似する容貌をもつモンゴロイドの拡張は,清朝以降のことだという点についてあまり異論はないようだ。

インドにおいてもケルト(スキタイ)の侵入があったと考えられ,従来は,これを「アーリア人の侵入」として表現してきたのだろうと思う。かつてのナチスドイツのアーリア人ドグマの影響を受けているのかもしれない。現在のロシアにおいても,スキタイが白系ロシア人と同じとする思想があるが,明らかな誤りで,雪嶋宏一『スキタイ-騎馬遊牧民族国家の歴史と考古』でも強く主張されているように「タタールのくびき」を源流とするものと考える以外にない。その意味では,ロシアはモンゴルの後裔ということができ,古代のスキタイとは関係がない。

さて,問題は,古代の中国だ。

古代の中国においては,古代のイラン,アルメニア,トルコ,ギリシア,コーカサスの人々と同じような顔をした人々が多数存在したのではないだろうか?

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