Debra Wilson, Genetics, Crime and Justice
昨年,下記の書籍を購入し,昨年中に読んだ。
Debra Wilson
Genetics, Crime and Justice
Edward Elgar Pub (2015/10)
ISBN-13: 978-1783478811
法学及び法律実務に携わる者であれば必須の知識が淡々と述べられている。必読の1冊と言える。
米国刑事司法における歴史を踏まえ,現代における議論までほぼ網羅的に触れられているのではないかと思う。
古典的な生来的犯罪人説の再来とでもいうべきか,遺伝子上の問題(いわゆるXYY症候群等と呼ばれるXYY染色体だけでなく,XXY,XXX,XXYYの場合など)が犯罪学に対して及ぼしている影響は大きい。論者の中には科学的知見を正確かつ適正に踏まえることなく,何となく感情論で議論を展開している者も散見されることを憂慮している。本書では,冷静に事実を叙述し,科学的に証明されていることとそうでないこととを明確に識別した上で自論を展開しているところがとても良い。ただし,「見解の相違」を含め,本書で示されている見解に対する批判的な意見も当然にあり得ると考える。
本書の叙述は簡潔でくどくどしていないので,当該専門分野について予備知識がないと理解しにくい部分があるけれども,司法試験合格レベルの者であれば一応法学全分野について一定以上の素養を有していることになっているので,読みこなすことができるだろうと思う。
成人の刑事司法だけではなく少年法の分野についても示唆するところが極めて多く,良書と言えると思う。
どこかの出版社から是非とも日本語訳を出してもらいたいものだ。そうすれば,普通の法学部学生でも読むことができるだろう。
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