Anthony Walsh & Jonathan D. Bolen, The Neurobiology of Criminal Behavior: Gene-Brain-Culture Interaction
下記の書籍をざっと通読し,特に興味をもった部分を精読した。
Anthony Walsh & Jonathan D. Bolen
The Neurobiology of Criminal Behavior: Gene-Brain-Culture Interaction
Ashgate (2012)
ISBN-13: 978-1409438410
脳科学から犯罪者の行動を説明することができるかどうか,できるとしてそれが妥当であるかどうかについては議論がある。
脳科学から説明する場合でも,遺伝子的・先天的な要素の発現として理解すべき場合と,環境や生活習慣等によって後天的に獲得した要素の発現として理解すべき場合とがあり得ると想定されることから,この点についても議論がある。
本書は,犯罪行動を幾つかの側面に分類した上で,どのような説明が合理性を有するかについて検討を加えた書として評価することができるだろうと思う。
一般に,法学研究者が自分自身の哲学として犯罪行動とその原因を考察することは自由なのだが,人間が生物である以上,先天的な要素よりわけ遺伝子による支配を無視することはできない。現在の標準的な法学において決定的な欠陥となっているのはこの部分だろうと思う。
より正確には,法学研究者も無知ではないので,遺伝子ベースで立論するとほとんど全部の法学理論が崩壊する可能性があることを十分に理解しており,それゆえに遺伝子ベールのアプローチというものを意図的に無視しているのかもしれない。
しかし,無視することは許されない。
理論が崩壊したならば,新たな理論を構築すればよいではないか。それができないのであれば,諦めて教壇を去れば済むことだ。
一般に,学説というものは,ある事柄を説明するために研究者が思索した結果を符号化したものに過ぎず,常に仮説であり続けることを逃れることができない。つまり,学説は,真理そのものではない。
私見としては,従来から私が主張してきた免罪符理論を基礎として,全法学体系さらには社会科学の体系全部を構築し直すほうがよいと考えている。
免罪符理論は,遺伝子ベースのアプローチをとる場合でもそれをとらない場合でもどちらの場合でも合理的に機能するし,文化人類学等との親和性も高いので,理論としての健全性を有していると自己評価している。免罪符説を応用した国家の恩恵説に基づく解釈論を用いた最初の論説は,2016年2月末までには公刊できる見込みとなった。
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