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2016年1月19日 (火曜日)

柳川弘志・土居信英・板谷光泰・菅原正・四方哲也『現代生物科学入門9 合成生物学』

下記の書籍を読んだ。

 柳川弘志・土居信英・板谷光泰・菅原正・四方哲也
 現代生物科学入門9 合成生物学
 岩波書店 (2010/4/28)
 ISBN-13: 978-4000069694

大学生向けの教科書として書かれたものだと思う。非常にわかりやすいし,良い書籍だと思う。

ただし,終章にある研究者の倫理的なものについて書いてある部分は,他の類書と同様,「人間の尊厳」を損なわないように配慮すべきだとの抽象的な提案にとどまっているので,何も書いていないのと同じだろうと思う。

執筆者自身が生物学の研究者であり意欲的で斬新な研究をどんどんやりたいのだろうし,生物学の研究者自身が自己抑制的に書くことができるとは到底考えられないので,この程度のことを書くのが限界なのだと考える。その意味では,自己管理的なマネジメントは全く機能しようがない。生物学とは無関係なところがストップをかけない限り,「人間の尊厳」どころか「人間の存在」を消滅させかねないような研究の抑制はあり得ない。今後も,人間の尊厳とは無関係に研究がどんどん進められることになるだろう。

ところで,一般に,高校の生物教科書はほとんど役立たずなので,理系・文系の別を問わず,1から教え直さなければならない。生物だけではなく歴史学でもそうで,高校教育が若い世代をダメにしてしまっていることは否定できない。ダメにされてしまっている若者を正しく教育しなおすことは大学教授の職務ではないはずなのだが,高校教師は検定教科書に従って教育しなければならないので高校教師にそれを期待するのは酷なことだ。

やむを得ず,私の講義では,「諸君がこれまで覚えてきたことは全部間違いまたは嘘だと思いなさい」と述べ,大学生として読むべき本を示しながら授業を進めている。

生物学については,これまで,講談社からブルーバックスとして出版されている『アメリカ版大学生物学の教科書』のシリーズを推奨してきた。図版が素晴らしく,文系の学生でも理解しやすいような工夫が凝らされている。

日本でも良い生物学教科書が出ていないかと常に探しているのだけれども,翻訳書を除いてはなかなか見当たらない。

今回読んだ『合成生物学』は,内容的には優れたもので勉強になる部分が多かった。しかし,文系の学生にとっては難しすぎると思う。受験科目として生物を選択していない学生には全くチンプンカンプンかもしれない。

(余談)

ところで,明治大学の法学部の科目として,これまで何年かにわたり「植物と法」という科目を実施してきた。法学部執行部からの指示により科目数を減らすようにとのことだったのでやむを得ず2017年度以降はこの科目を廃止して科目数を減少させることとなった。その結果として残っている科目は大学の規定上必ず実施するものとされているものだけなので,これ以上減らすことは法令の解釈・運用上できない。最小限の科目構成で頑張ることになる。個人的には言いたいことがいろいろあるけれども,言っても仕方がないことなので,この場は長いものには巻かれることとしたい。

「植物と法」を受講しようと予定していた2年生(来年度の3年生)にはまことに気の毒な結果となってしまったのだが,私の不徳の致すところとお詫びするしかない。

今後は,植物関連の法解釈論や法制度論に関しては,主として論文というかたちでこれまでの研究成果の公表を続けることとする。興味のある学生は,論文が掲載された雑誌を読んでもらいたい。

この分野では,現実に栽培困難または不可能とされている植物を何百種類も長期間継続して栽培・観察し,遺伝子解析結果や生物化学的分析をも踏まえながら全く新たな法学理論を構築している研究者が世界中でこの私1人しか存在しないので,定年に至るまで,今後も引き続き研究を続けようと思う。

ぺんぺん草1本ろくに育てることさえできない者が偉そうなことを書いて威張っているのを目にすると怒りを覚える。しかし,怒っても仕方がないことだ。

私は,コツコツと地味な研究を重ね,そして新たな論文を書く。既存の法理論の応用では全く無駄な世界だし,そもそも既存の法理論の大半が砂上楼閣なので,私法・公法の別を問わず既存の法学上の基本理論を全て書き換えるというつもりで完全に新たに構想し続ける必要があるのだが,そのことが私の学問的好奇心を刺激し続けている。

[追記:2016年2月12日]

関連記事を追加する。

 大阪大学の研究者等による戦略的創造研究推進事業の研究費不正使用に係る処分について
 科学技術振興機構報第1166号:2016年2月12日
 http://www.jst.go.jp/pr/info/info1166/

 大阪大、2億7千万円の研究費不正で教授解雇
 産経ニュース:2016年2月12日
 http://www.sankei.com/west/news/160212/wst1602120058-n1.html

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