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2016年1月 3日 (日曜日)

新井白石(原田信男校注)『東洋文庫865 蝦夷志 南島志』

下記の書籍を読んだ。主として原文だけ読み,必要に応じて解説の部分を読んだ。

 新井白石(原田信男校注)
 東洋文庫865 蝦夷志 南島志
 平凡社 (2015/11/18)
 ISBN-13: 978-4582808650

改めて新井白石の博学を思い知る。

本書には,『蝦夷志』と『南島志』が一緒に収録されている。附圖の白黒写真もついている。

『蝦夷志』の圖の中で,アイヌの着物であるアツシの図には驚いた。曲線的な雲流紋と鶴,松,龍が描かれている。全体としてみると,清朝の中国人の服のようにも見える。夫婦図には「ハダシ(裸足)」とあり,どう見ても入墨の類が全くない。

最初からしっかりと読むと,北海道南東部を蝦夷地として支配するに至る経過がどのような典拠によって論証できるのかを知ることができる。

他方,『南東志』にはひっかかる部分が多々ある。

新井白石の理解によると,邪久國=多邇國=琉球ということになるのではないかと思う。

中国の史書によれば,琉球は,古代の中国諸王朝からたびたび遠征を受け,人々が奴隷として連れ去られることが度々あったことが窺われる。

にもかかわらず,新井白石は,琉球(南西諸島)の地理について詳密に知っており,それを記載している。つまり,遅くとも新井白石の時代には,琉球全域が徳川幕府の支配下にあるものとして日本国領土の一部だったということを知ることができる。

このような認識に対しては感情的な反応をする人があるだろうと思う。

しかしながら,客観的にみて何が記述されているかが大事だと思う。

「そうではない」というのであれば,そうではないということを示す何らかの根拠を提供しなければならない。

私が古代の中国正史を読んで理解している限り,古代の中国諸王朝の認識としては,「奴隷狩りのための場」と考えていたらしいということしか言えないように思う。

現代でもそうなのかどうかは知らない。

いずれにしても,一度は読んでおくべき書籍だと思う。

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