これは猥褻画像か?
BBC NewsのWebサイト上にあった商業宣伝広告なのだが,遠くからみるとわいせつ画像のように見えるかもしれない。しかし,画像を拡大すると,わいせつ画像ではない。
画像の要素を文字だけで表現することはできないので,著作権法上適法行為である必要不可欠な部分だけの公正な慣行に従う引用として画像(部分)を示すことにする。閲覧年月日は2015年12月26日だ。
http://cyberlaw.la.coocan.jp/Documents/HuaweiP8.jpg
この画像のように,ある対象の属性値は主観的評価基準の相違によって異なる結果をもたらし得ることが少なくない。文脈的理解が必要な場合にはその複雑性と困難性が何倍にもなる。
それゆえ,判断は慎重でなければならない。
まして,刑事司法は謙抑的でなければならない。
実例としては,事件発生当時においても現時点においても少しも猥褻ではないものを猥褻物として評価した伊藤整訳『チャタレイ夫人の恋人』に関する裁判事例がある。
学説の多くは,「わいせつ性」の判断について,事実認定の問題ではなく法律解釈の問題だと解している。事実認定の問題でないことについてはそのとおりだが,法律解釈の問題とする点は誤っている。この問題は,法律解釈の問題ではなく,判断者(裁判官)が自分の個人的な趣味・嗜好を他人に強制することのできる権力を有しているかどうかの問題に過ぎない。
つまり,猥褻性の有無に関しては,それがどのような判断であっても常に個人的な趣味・嗜好の域を出ることがあり得ない以上,権力によって強制される恣意の一種に過ぎず,そもそも学問の対象とならないのだ。
日本国の憲法は,そのような恣意を強制することのできる司法権を国家組織として設定しているので,このような問題を根本的に解決するためには,日本国憲法を一部改正しなければならない。
結局のところ,とことん突き詰めたレベルでの法情報学を会得し,それを用いることのできる者が非常に少ないということに尽きるのではないかと思う。
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