瀬間正之『風土記の文字世界』
オンデマンド版として販売されていた下記の書籍を購入して読んでみた。
瀬間正之
風土記の文字世界
笠間書院 (2011/2/28)
ISBN-13: 978-4305705419
非常に勉強になった。
ただ,若干気になることが出てきた。
「当時の普通の漢人は,果たして厳格に文法と語彙を守った漢文を書くことができたか?」という疑問だ。無論,宮廷の官吏はちゃんと読み書きができただろうと思う。しかし,武人や庶民もそうだったという保証は全くない。このことは,現代の日本人でも同じで,普通の日本国民が文法上及び語彙上で完全に正しい日本語の読み書きができるという保証は全くない。
また,三国時代~五胡十六国の時代ころには様々な民族が入り乱れていたと推定されることから,どの国の誰でも完全に正しい漢文の読み書きができたとは到底考えられない。
すると,風土記に見られるような「正しくない漢文」を倭人が書いたという保証もないことになる。例えば,ネイティブの言語としては主にソグド語ないしバクトリア語を用いる胡人の官僚が漢人として倭國に渡来して帰化した場合,本来の漢人と同様まで完全な漢文の読み書きをすることができなかったかもしれないと考えられる。
このことは,例えば,現代の日本に居住して英語教師をしている米国人が文法上及び語彙上完全に正しい英文の読み書きができるとは限らないということと似ている。
仮説はいくらでも考えることができるのだが,タイムマシンが存在しない以上,確定することには困難が伴う。
更に勉強を重ねることにする。
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