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2015年12月14日 (月曜日)

瀬間正之『記紀の表記と文字表現』

三省堂で注文していた下記の書籍が届いたので,早速読んでみた。

 瀬間正之
 記紀の表記と文字表現
 おうふう(2015/2/26)
 ISBN: 9784273037628
 http://www.ohfu.co.jp/book/b194073.html

私の知らない読み方が多数書かれており,古典を読む場合の留意点を多数知ることができたので,その意味でとても参考になった。

ただ,疑問点もある。

例えば,日本の古語と百済語や新羅語との対比をしている部分について,現代朝鮮語の発音をベースにした考察がなされている。しかし,どうして同じような発音だと言えるのだろうか?

当時の百済や新羅の人々が現在と全く同じような人々という意味での朝鮮人だったという確証は何もない(歴史的には,元による征服以降の時点で相当程度の遺伝子上及び文化上の混淆が発生していると考えるほうがむしろ合理的だろう。遼東半島~朝鮮半島では,それ以前の時点でも漢,魏,隋,唐などによる征服が行われている。白村江の戦の直後の状況について,『旧唐書』巻二百十一には、「麟德二年 封泰山 仁軌領新羅及百濟 耽羅 倭四國酋長赴會」と書かれているので,その時点で百済と新羅の両王国が滅亡しており,それ以降の新羅国は全く別の国だと考える余地もあるのではないかと思う。)。仮に朝鮮語族だったとしても,現代の発音とは相当かけ離れた発音であった可能性を否定することができない。そうでないとも言い得るが,どちらの仮説にしても確証は何もない。つまり,何も確実なことは言えないので,単純比較はできない。

そういうあたりがかなり気になった。

以上のような問題点はあるが,丁寧に考察が尽くされており,一度は読んでおくべき書籍ではないかと思う。

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