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2015年12月31日 (木曜日)

小野健吉『日本庭園の歴史と文化』

下記の書籍を読んだ。

 小野健吉
 日本庭園の歴史と文化
 吉川弘文館 (2015/10/20)
 ISBN-13: 978-4642016513
 http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b201443.html

本書は,著者が専門論文として公表してきたものなどを対象とする庭園の年代順にまとめ直したものだ。本書の元になった論文は既に全部精読済みだったので,「まとめるとどういう仕上がりになるのか?」といった興味をもって読んだ。

収録されている写真はカラー写真でとても綺麗だ。古典園芸に興味のある人は,145頁に収録されている「御花畠」の図(カラー写真)に狂喜するかもしれない。こういう図が存在するということは意外と知られていない。この図を丁寧に観察すると,様々なことを理解することができる。私は,スカシユリのような感じのユリの仲間の植物の姿(一見するとヘメロカリスのようにも見えるが,葉が全く異なる。花序のつき方からしてコオニユリの仲間でもないと考える。)をみて笑ってしまった。これも渡来品の品種なのだろう。

それはさておき,古代の庭園を可能な限り精密に知ろうとする努力は,日本の古代というものの本質を認識・理解する上で極めて重要なことだと考える。

空想だけでも『懐風藻』や『万葉集』等の解釈はできる。

しかし,実物の遺構を知った上で,それでも維持できる解釈論でなければ単なる空想またはエッセイの類に過ぎない。

(余談)

京都に出張するときは,できるだけ古い庭園や寺社を訪問して見聞を広めるようにしてきた。しかし,それと同時に,そのような素晴らしい場所がどのような建物に囲まれて存在しているのかもしっかりと見るようにしてきた。要するに,庶民の暮らしもしっかりと観察し続けたし,記憶しきれない部分は写真に収めてきた。

私が思うには,古代の庭園は,竪穴式住居やそれを少し改良したくらいの粗末な建物が密集する都市の中にあって,障壁によって隔絶された特別の空間だったのだと考える。そのことは,現在の寺社でも基本的には変わらない。

もう少し範囲に拡張して考えてみると,洛中と洛外とでは全く異なる社会が存在しているように思う。このことは,奈良に都があった当時でも同じだったろうと思う。

どうしてそのようになったのかを考えるところから歴史学の旅が始まる。

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