日本臨床カンナビノイド学会編(佐藤均監修)『カンナビノイドの科学-大麻の医療・福祉・産業への利用』
下記の書籍を読んだ。
日本臨床カンナビノイド学会編(佐藤均監修)
カンナビノイドの科学-大麻の医療・福祉・産業への利用
築地書館(2015/10/16)
ISBN-13: 978-4806715016
http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1501-6.html
わかりやすく解説している書籍で,とても勉強になった。
[追記:2015年12月13日]
大麻草の薬効及びカンナビノイドの薬効に関しては,下記の書籍も出ている。これらも参考になる。
福田一典
医療大麻の真実-マリファナは難病を治す特効薬だった
明窓出版 (2015/10/20)
ISBN-13: 978-4896343571
レスリー・L. アイヴァーセン(伊藤肇訳)
マリファナの科学
築地書館 (2003/5/20)
ISBN-13: 978-4806712664
なお,『カンナビノイドの科学』及び『医療大麻の真実』には大麻取締法制定の経緯について書かれている部分がある。これを読んみても,立法理由については正確なところがわからず,謎のままということができる。
それだけに,法解釈論としては,大麻取締法には,GHQの指令及び単一条約に基づくという以外には明確な立法事実が存在しない(=無効な法律)ということを理解することができる。米国においては,医療目的での大麻草利用禁止を違憲とする判決が存在しており,また,各州において大麻草を合法化する動きが更に顕著化していることから,少なくとも米国においては単一条約それ自体が既に無効化していると考えることもできるだろう。
この問題については,「植物分類体系の変化が法制度に与える影響-大麻規制法令を中心とする考察-」法律論叢84巻4・5号91~112頁において述べたとおりなのだが,THCそれ自体の有毒性について再検討すべき段階に入っていると考えられるので(同論文の中では一定量以上のTHCが有毒であるという説を前提とした考察を加えている。),全面的に補訂する趣旨の新たな論文を書くことになるかもしれない。そのためには,自然科学の分野におけるTHCの薬理に関する研究成果がもう少し欲しい。違法でなければ自分で栽培して自分で分析してしまうのだけれども,栽培行為は現行法下では違法行為となるので,栽培も研究もできない。日本の研究者では同様に研究それ自体が難しいので,海外の研究成果の公表と集積を待って補訂の趣旨の論文を書くことになるだろう。
雑駁な感想的な意見としては,日本国は,まだGHQの特定の係官と癒着した米国の某勢力(=それらと癒着した日本国内の特定の企業群)によって支配され続けているということくらいしかできないかもしれない。
日本の研究者が大麻取締法によって研究を阻害されている間に,大麻草関連特許の大半が外国企業によって支配される事態が生じているし,様々な薬品の開発も外国企業によって行われるに至っており,同法の存在それ自体が大いに国益を害する状態が存在していることは誰も否定しようがないのではないかと思う。
生物の細胞壁における化学物質の作用と機能に関する多数の書籍や論文を読み考え続けてきた。大麻草及びそれに含まれる化学成分はテストベッドとして最適なものの一つだと考えられる。しかし,日本国内ではその研究が禁止されてい以上,日本の生命工学や認知工学等に未来は全くない。日本の科学者は気の毒だし,現行法のままでは優秀な頭脳の海外流出を大いに促進することはあっても阻止することは全くできない。そのようにして日本の科学技術が世界最高レベルを誇るような事態の発生を阻止することもまた,大麻草禁止の政治的・経済的な大きな理由の一つなのではないかと思う。
おそらく,本来は東洋人の得意技であった薬草の栽培と利用の権利を西欧列強が全て奪い,東洋人及びその企業を奴隷化しようとする国際的な政策がかつて存在しており,それが全く改められないままで今日に至っているということなのだろうと想像している。肉食人種にとって薬草の利用は得意技であるとは言えない。そのような問題を克服するために,何十年にもわたる「時間かせぎ」が西欧列強主導の国際条約の下で行われてきたという具合に,未来の歴史家は20世紀史を書くことになるかもしれない。
ただし,私は,薬理の本質を理解しない無分別な薬品や健康食品の安易な氾濫には大反対の立場をとっている。この点に関しては,かなり大きな論文をまとめて現在ゲラ校正の段階にある。2016年2月ころに刊行されることになるだろう。
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