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2015年12月31日 (木曜日)

黒須重彦『『楚辞』と『日本書紀』-「こえ」から「文字」へ』

下記の書籍を読んだ。

 黒須重彦
 『楚辞』と『日本書紀』-「こえ」から「文字」へ
 武蔵野書院 (1999/10/14)
 ISBN-13: 978-4838601851

この書籍は,「『楚辞』の蘭」を執筆した際に,楚辞に含まれている詩(賦)の発音が気になり,その関連の部分(第2章)だけ読んだのだが,前半の『日本書紀』や『先代舊事本紀』等と関連する部分(第1章)はざっと読んだだけだったので,改めて精読し直した。

音によって伝えられてきた伝承等を文字化するということ,また,文字化された作品を写本や編集という作業を経ながら伝承するということ,そして,伝承された作品を現代において解釈するということの認識論的な意味での作用・機能を再確認させられる。

非常に勉強になった。

単調な解釈論だけではどうにもこうにも手も足もでない世界なのだが,実際には,権威ありそうな論文でも単調な解釈論だけで形成されている場合が決して少なくない。

しかし,1000年以上も伝えられてきた作品がオリジナルのままであるはずがなく,様々な夾雑物が混入しており,場合によってはオリジナルとは相当異なる姿になっていることさえ十分にあり得るので,単調な解釈は無力だ。非単調な「寄せ鍋」のようなものとして理解すべきだろう。

本書は,比較的短いもので,多数の論点について結論とその例証を簡潔に示しているだけなので,実際に『日本書紀』や『楚辞』を解釈しようと格闘を重ね,へとへとになった経験を有している人でないと真意を理解しかねる部分があるかもしれないが,示唆するところは非常に多いと考える。

(余談)

「『楚辞』の蘭」を収録した雑誌は,2015年12月中に発行予定となっているのだが,現時点でまだ届いていない。発行日付は2015年12月となるだろうと思うが,現物が届くのは来年になるのではないかと思う。

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