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2015年12月25日 (金曜日)

友廣哲也『土器変容にみる弥生・古墳移行期の実相』

下記の書籍を読んだ。

 友廣哲也
 土器変容にみる弥生・古墳移行期の実相
 同成社 (2015/10/18)
 ISBN-13: 978-4886217004
 http://homepage3.nifty.com/douseisha/kouko/kohunn/kohunn.html#dokihennyou

主として群馬県内出土の土器(特に石川田式土器)を丹念に調べ,系統付けた上で,この地域における文化交流を推論している。何本かの論文をまとめたものらしく若干重複する記述が目立つが,内容的には全体として充実しており,参考になる部分が少なくなかった。著者の努力の積み重ねの結晶と言えるだろう。

ところで,著者の友廣哲也氏は,本書の中で,「入植民」による文化の発生という考え方に驚きを覚えたという趣旨のことを書いている。しかし,私にはどうして驚くのかわからない。それ以外にあり得ないのではないだろうか。

本書の中で何度も出てくる浅間山噴火の噴出物である軽石Cの存在や,その後の榛名山大噴火による噴出物の存在を考えると,絶滅または壊滅的打撃(=無人化またはほぼ無人化)を繰り返してきた地だと推定するしかない。

無人の荒野には他所から必ず入植者がやってくる。辛うじて生き残った人々は新たな入植者達によって奴婢とされたのかもしれない。そういうことを繰り返して現在に至っているのだろう。

それゆえ,土器の様式にも断絶のようなものが見られると考えると,全体像を容易に説明できるのではないかと思う。

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