高橋郁夫・梶谷篤・吉峯耕平・荒木哲郎・岡徹哉・永井徳人編『デジタル証拠の法律実務Q&A』
下記の書籍の寄贈を受けたままちゃんと読んでいなかったのだが,大学の2015年内の講義が次第に終了となり時間に余裕が出てきたので,全部読んでみた。
高橋郁夫・梶谷篤・吉峯耕平・荒木哲郎・岡徹哉・永井徳人編
デジタル証拠の法律実務Q&A
日本加除出版(2015/9/14)
ISBN-13: 978-4817842480
https://www.kajo.co.jp/book/40597000001.html
この分野の書籍の出版には難しさがある。それは,文系の人間にとっては技術的事項がよくわからず,理系の人間にとっては法解釈論がよくわからないので,両方とも満足させることのできる書籍を執筆することが非常に難しいということに起因している。
私は,かつて,『ITセキュリティソリューション大系』という大型の専門書籍の出版に関与したことがあり,自分でも分担執筆をしたことがあるので,その難しさがよくわかる。
『デジタル証拠の法律実務Q&A』では,図版を多く用いて文系の読者でも技術的な事項に関する具体的なイメージをつかみやすいように工夫されている点が非常に良いと思う。
実務書であり理論書ではないので,刑訴法上の法解釈論という面では深みに欠ける印象を受けるけれども,何が問題でありどのように考えればよいかというきっかけのようなものを知るためにはかなり有用な書籍だと評価できる。
内容のレベル(理解する上での難易度)としては,大学法学部や大学院等で使用するとちょうど良い感じがする。
なお,刑訴法上の論文としては,だいぶ前に法学教室誌上に掲載された井上正仁「コンピュータ・ネットワークと犯罪捜査」があるけれども,最近はあまり良い論文がない。
私は,『Q&Aインターネットの法務と税務』で少し書いている。そこでは克服不可能な理論上・運用上の困難が存在していることを示唆している。これも実務書のようなものなので,再来年あたりにちゃんとした法律論文を書こうかと思う。
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