渋谷申博『諸国神社 一宮・二宮・三宮』
下記の書籍を読んだ。
渋谷申博
諸国神社 一宮・二宮・三宮
山川出版社 (2015/7/30)
ISBN-13: 978-4634150867
本書の著者も書いているように,一宮制度の由来は不明の部分が多いというよりもほとんどわかっていない。私は官衙または国衙としての社会的・政治的機能をもつ神社(上の社・守の社)を一宮としたのではないかと考えてきたのだが,本書の著者も同じような発想で考えているようだ。
学術書というよりは全国各地にある一宮・二宮・三宮のガイドブック的なもので,それぞれの神社の縁起や祭神等について要領よくまとめて書いてある。一般向け書籍としての読みやすさ,網羅性,検索性という点では類書の中でも随一と評価できるものではないかと思う。
あえて難を言うとすれば,参考文献として列挙されているものが比較的最近のものだけに限られており,重要な文献でも古いものは掲げられていない。推測だが,一般の人が入手することの困難な文献についてはあえて省略し,参考文献として掲げた文献から自力で探索し図書館等で読むということを期待しているのではないかと思う。学術書ではない一般向け書籍としてはむしろ好ましい対応かもしれない。
全部読みとおしてみて,私なりに感ずるところが多々あった。こういう感覚は,ミクロ的な詳細検討・微細な分析によってではなくマクロ的な大量観察によって得られることが多い。
國によってはある種の特性が顕著に示されているところがある。例えば,美濃國,周防國などがそうで,基本的には鉱山・冶金の神を祀る構造になっている。これは,単に当時の支配者の祭神だったということだけでは説明のつかないことで,その國の当時における主要な産業がそのようなものだったと推定したほうが合理的に説明しやすいのではないかと思う。
美濃國については特に興味をもったので,宝賀寿男・桃山堂『豊臣秀吉の系図学-近江,鉄,渡来人をめぐって』(桃山堂,2014)を読み直してみた。いろいろと考えるところがあった。
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