鈴木靖民・金子修一編『梁職貢図と東部ユーラシア世界』
下記の書籍を読んだ。
鈴木靖民・金子修一編
梁職貢図と東部ユーラシア世界
勉誠出版 (2014/5/10)
ISBN-13: 978-4585220602
極めて興味深い内容で面白く,何の苦もなく吸い込まれるようにしてすらすらと読めたので,かなりの短時間で全部読み切った。かなりお勧めの良書だと思う。
本書の最初のほうには,清の張庚「諸番職貢圖巻」の本文写真が収録されており,その倭國の部分を読んだところ,『後漢書』では「禾稻麻紵」となっているところが「諸番職貢圖巻」では「稻禾麻芋」となっていることを理解した。
「紵」ではなく「芋」が正しいと考える(『魏略』には,そのように書かれていたのだろうと推定する。)。考古学上の発見に基づく当時の主要農産物と合致するからだ。すると,「麻紵」を熟語として「紵麻」と理解し,カラムシの類と解釈する説は誤りということになる。正しくは,当時の倭國の農産物(栽培作物)は,「栗(禾)」,「稲」,「麻」及び「芋」であり,これらは全て現時点における考古学上の知見と一致する。「麻」は,カラムシではなくアサを意味するものと解すべきだろう。
そういう細かい点を含めて,非常に興味深い内容となっている。
議論のある「高句麗」,「新羅」,「百済」,「扶余」に関する論説と読み下し文は,古代史に興味をもつ人にとって多大の示唆を与えるものだと信ずる。
無論,張庚「諸番職貢圖巻」等にある記述を真実からかけ離れていると評価する立場では,何ともくだらない書籍ということになるかもしれないが,それは立場の相違によるものなので仕方のないことだろうと思う。
私は,張庚「諸番職貢圖巻」にある記述は十分に信頼するに値するものだと思う。
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