小畑弘己『タネをまく縄文人-最新科学が覆す農耕の起源』
Amazonで予約していた下記の書籍が届いたので早速読んでみた。奥付の発行年月日は2016年1月1日になっているけれども,実際には既に発売されている。
小畑弘己
タネをまく縄文人-最新科学が覆す農耕の起源
吉川弘文館(2016/1/1)
ISBN-13: 978-4642058162
http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b213026.html
コンパクトな書籍なのだが,最近の目覚ましい考古学上の発見等を踏まえ,とりわけ,キビやアワ等の脱穀・粉砕技術,コクゾウムシの痕跡,土器の形状等を総合的に検討しながら客観的な考察を進めている。根拠とする資料等は巻末にまとめられており,更に深く研究する場合の手掛かりとなるだろう。
近年,農耕技術が朝鮮半島から倭國に伝来したという従来の説には物理的な根拠が欠けるということが指摘され,逆に,考古学上の発見を重視する限り倭國から北上して朝鮮半島に農耕技術が伝来したと推定するほうが合理的だという見解が普通になっている。韓国の学者は決して同意しないかもしれない。しかし,空理空論ではなく物理的・客観的資料を重視すれば,農耕技術北上説のほうが妥当だと考える。
私見では,いわゆる「三韓国」なるものは遼東半島付近にあったと考えるので,農耕技術北上説は私見とも一致する。非常に心強い。
ちなみに,「吉備」の語源は「キビ(黍)」であり「阿波・安房」の語源は「アワ(粟)」にあるとの推論は結構古くからあり,私見も基本的には同じだ。本書を読んで,その感を更に深めた。
『古事記』や『日本書紀』にある「国譲り」は「禅譲」の一種なので,中国の三国時代~隋あたりの時代の中国諸王朝における「禅譲」とシンクロしていると推定しているのだが,更に検討を深めたい。
更に,『古事記』や『日本書紀』では神武天皇の「征服」によって現在にまで至る日本国が始まったということになっている。この「征服」の本質についてもいろいろと考えることがある。「アワ」や「キビ」を主体とする国家から「イネ」を最も重視する国家への変貌は,そのような事情を背景するものではないかと思う。
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