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2015年12月30日 (水曜日)

健康保険証番号が大量に流出して流通?

下記の記事が出ている。

 健康保険証番号10万人分が流出  医療機関から漏れた可能性
 共同通信:2015年12月30日
 http://this.kiji.is/54614982557681142?c=39546741839462401

名簿業者を通じて流通しているらしい。

改正個人情報保護法83条は,「個人情報取扱事業者(その者が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。第八十七条第一項において同じ。)である場合にあっては、その役員、代表者又は管理人)若しくはその従業者又はこれらであった者が、業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定している。

医療機関(従業者や元従業者)から情報が流出した場合,同条の適用があり得ることは疑いがない。

問題は名簿業者なのだが,有償で情報を提供した場合には,原則として,同条の該当性ありと解釈するのが妥当だと考える。有償で他人の個人データを売買することについて基本的に適法性は全くないので(例外として,個別に物体としての書籍や冊子を売買することに伴い必然的に個人情報が移転してしまう場合は適法行為となる。例えば,古書店で物体としての同窓会名簿や学術論文等が個別に売買される場合などがその典型例となる。書籍や冊子からデータを抜きだしてリスト化したようなものの売買は個別の書籍等の売買に該当しない。),常に「不正な利益」を得る目的があると認定すべきである。

例外として違法性が阻却される場合としては,当該個人情報データベース等に含まれる個人データの本人から完全な同意を得ている場合等に限定して解釈すべきだろう。

ただし,ものごとの事理弁別能力のない一部の者は違法性はないと主張し,そのような論説を書くだろうと予測されるので,世の中そんなに簡単ではない。

今回の事例は健康保険証番号だが,米国では健康保険番号が日本のマイナンバーと同じような社会的機能を果たしているので,マイナンバーの流出と同じ社会的範疇に属する出来事だと理解することもできる。

なお,古書店には古物営業法の適用がある。

 警察庁:古物営業法の解説
 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetuzuki/kobutu/kaisetu.htm

名簿業者の場合,純粋に個人データの売買だけだと古物営業法の適用はないと解されるが,物体である書籍や書類等を売買しているときには,古物営業法の適用のある場合があり得ると考えられる。

内容的に個人データに該当するものでも純粋な電磁的記録のみの無権限取得の場合,窃盗罪や贓物罪が成立しないことは言うまでもない。この点については,「サイバー犯罪の研究(二)」及び「サイバー犯罪の研究(三)」で述べたとおり。

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