Wall Street Journal等のRupert Murdoch氏の企業サイトが2012年以来ずっとハックされていたことが発覚
下記の記事が出ている。
WSJ, Barrons hacked; CEO warns of wider plot
USA Today: October 9, 2015
http://www.usatoday.com/story/money/2015/10/09/barrons-hacked-ceo-warns-wider-plot/73663568/
Dow Jones reveals it was hacked, says up to 3,500 accounts were exposed
Venture Beat: October 9, 2015
http://venturebeat.com/2015/10/09/dow-jones-reveals-it-was-hacked-says-up-to-3500-accounts-were-exposed/
Dow Jones Discloses Customer Data Breach
Wall Street Journal: October 9, 2015
http://www.wsj.com/articles/dow-jones-discloses-customer-data-breach-1444406517
The Wall Street Journal's customer database was hacked
engadget: October 9, 2015
http://www.engadget.com/2015/10/09/wsj-customer-database-hack/
[追記:2015年10月19日]
関連記事を追加する。
Russian hackers breached Dow Jones for trading tips: Bloomberg
REUTERS: October 16, 2015
http://www.reuters.com/article/2015/10/17/us-dowjones-dataprotection-idUSKCN0SA2IS20151017
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コメント
江藤貴紀さん
全員が全員に対してエゴなホッブズ的な世界を解消する方法はないので,解決できないだろうと思います。もともと社会契約は理想ではあり得ても事実ではなく,単なるフィクションに過ぎません。ですので,人類は、解決策を何も手にしていないことになります。仮にこれから社会契約を結ぶとすれば,違反者をジェノサイドしてしまうことを肯定しなければなりません。比喩的に言えば,『スターウォーズ』の皇帝が必要になります。それは,現在よりも不幸な世界だろうと思います。他方で,封建時代に戻って,ローカルなエリアで王侯貴族が自己満足する世界を想定することもできますが,ここまでグローバルな経済が確立されてしまうと無理ですね。
現時点では,王侯貴族のような人々がカルテルのような協定を結んで破綻のない世界支配を続けているというのが真実ですが,いずれ「誰がその王侯貴族なのか?」を誰でも探知できるようになるでしょうから,王侯貴族的な人々による寡頭政という第二次世界大戦後の世界支配構造は,暴力によって現状を打破しようとする人々による実力行使によって物理的に破壊されることになるだろうと思います。なにせ,王侯貴族であろうと何であろうと,母親である人間から生まれてきた子供が成長した人間であることには何も違いはないんですからね。そして,人類のボディは,物理攻撃に対して非常に脆弱です。すぐに死にます。ここだけは誰でもみんな平等です。
米国を主唱者として西側諸国が「テロとの闘い」を最優先課題とするのは,そのような世界支配のメカニズムを前提にしないと理解できないことだと思います。現代の世界は,事実上の貴族階級による寡頭政の下にあるというのが最も正しい理解です。ですので,人類の権利における平等は決して存在しません。
そのような理解を前提に考えてみて,理念的には,幸福追求権や自由権を完全否定すれば達成できることはあると思います。しかし,幸福追求権や自由権を否定することができないし,否定したところで新たな専制君主を産むだけですので,状況を変化させることができないんですよ。
そういうわけで,めいめい勝手にやって壊れて自滅してしまうまで黙って待つ,というような感じになってしまいました。
***
ロボットは難しいですね。
自律型ロボットについては特に難しいです。
もっと近未来の半自動化されたドローンでは,その所有者(操縦者)が自分にとって都合のよい規範をプログラム化して実装するでしょうから,ドローン間の戦争は不可避だろうと思います。ドローンは,半自動ですので,その背後に人間の操縦者が存在していることを知っています。それゆえ,潜在的操縦者である全人類を殺すという判断が不可避的に生じてしまいます。
結局,全自動を想定している『ターミネーター』的な世界でも,それよりももっと幼稚な段階にある半自動ロボットの段階でも,そのどちらの場合でも,全人類の抹殺へと向かってしまうというベクトルの形成を避けることができないという結論になります。
ですので,人類は決してロボットをつくってはいけないんです。
せいぜい「からくり人形」くらいでやめておかないとダメです。
しかし,産業界が自律型ロボットの開発をやめることはないでしょう。
幸福を追求し自由を謳歌したいでしょうしね。
しかし,それが全人類にとって非常に大きな迷惑ということなんです。
このことは,社会主義体制や共産主義体制をとっても全く変わりませんので,ロボットによる人類絶滅という文脈では,イデオロギーもまた完全に無力です。
投稿: 夏井高人 | 2015年11月 4日 (水曜日) 03時50分
夏井高人様
内部統制の欠陥は、最近も二重のレベルでその実例をみてばかりです。
私なりに今の国内法制を一般的な実務家の相場と思われるレベルで解釈したところ今回の発見のうち表題となる話は、まさしく「法の運用主体」自体が、恣意的に法を解釈した結果、ディテイルが過度に出てきたように思えます。この恣意的な権限の濫用も、内部統制に内在する欠陥の一つと思えます。
(絶対的な正義とか立法論のレベルでいえばこれくらい出すのが当然と考えています。ですが、あくまで現行法の一般的な運用基準に照らすとアブノーマルということです)
皮肉なんですが、自主性を重んじるマネジメントシステムの欠陥を示すには、まさしくその自主性を重んじるマネジメントシステムが内包している別の欠陥、例えばミニマムな「政局」とか駆け引きの風に従って恣意的に法が運用されたのが契機になりました
(実際、このタイミングでこの場所で発表の機会を狙ったのも、その風向きを考えて実務家の方が法を恣意的に運用すると期待できたからですが)
ともかく、1度出たオーソリティ(本当は日本国憲法の条文ではその権限は明示的に別の機関が有しているのですが)の実践は、これからの慣習法につよい影響を持ちます。
経験上ですが、(古典を書くようなモラル・能力の持ち主はもちろん希なので)誰かがやるとそれがドミノ倒しになるというのがパターンです。
私も流石にいろいろ諦念を抱く程度の齢は大幅に超えております(笑)。ただ「穢れた世間」から有用性を引き出せるならば、そこから便利な手法を編み出して世間を理想に近づけることも可能ではないかと思っています(ただ、イタチごっこになるでしょうけど。
まあいちおう、あるジャンルの国内法制の運用手法で、まえからやりたかったことが実現出来たことになります。
ところで10日ほど前にコンピュータに法規範を教え込むことが無理に近い、という趣旨の記事を書いておられたように記憶しています(その分野での深い議論は不勉強で知りませんが、確かにすこし考えれば私でも同じ結論に行き着くしかありえません)が、こういった風に、人間が法を解釈するときに「ご都合主義」を持ち出すことを念頭に置いて考えるのもコンピュータでは難しいですよね。
以上のミクロな話は、絶対に古典になるレベルではありませんが、一時的にドメスティックな範囲で普及する方法論にはなるかもしれない、くらいに予想しています(同時に、このテクを使う人が専攻業績へのクレジットをつけてくれることもないと経験上、確信していますが・・・これは内在的な規範の問題でしょう)。
投稿: 江藤貴紀 | 2015年11月 4日 (水曜日) 01時03分
江藤貴紀 様
『荀子』は若いころに読んでよくわからず,その後,いつかわかるようになろうと思ってときどき読んでおりました。
最近,ランの関係の論説を書くために,かなり気合を入れて全文を何度か精読し,やっと理解できるようになりました。
かれこれ30年以上かかっています。
私なりの結論を得ております。『荀子』が述べていることは正しいです。しかし,世間が醜悪そのものなので誰も受け入れることができないでしょう。まさに性悪説しか成立しないと考えます。
キリスト教で言えば原罪にあたるようなものかもしれません。
仏教でも同じで,結局,誰も解脱できないんですよ。
つまり,理想論は理想論なのであって,穢れた世間をただす力などありません。
そうである以上,韓非子みたいな考え方も必要になるのだと思います。
現代社会ではとりわけそうかもしれません。
私が自主性を重んずるマネジメントシステムの欠陥について述べている根本原因もここらへんにあります。
繰り返しになりますが,マネジメントシステムは手法の一種に過ぎないので,価値中立的というか,犯罪者にとっても便利な手法の一つとなります。
そこらへんをどう考えるかが大事なポイントとなりますね。
ただ,人間感というか世界観の相違を乗り越えることは無理そうです。
その結果,諦念というものが待っています。
道教の存在理由はそこらへんにあるのかもしれません。
ただし,理想化された荘子の心境に達することのできる者はこれまた稀なので,結局,どうどうめぐりでしょうかね。
投稿: 夏井高人 | 2015年10月20日 (火曜日) 08時26分
夏井高人様
ここのところは、「従来から、経営陣や幹部社員の組織的犯罪に対して法的スキームは基本的に役立たずだった」が真理かもしれないと思いはじめています。
建前と現実はほど遠いもので、「正義」を名乗っていて「正義」を必ずしも実践していない組織はあるでしょうし、誰かがウェブ上に上げたサイトのアドレスは、二世代ほど前のものをたまたま反映したものであったりとか、いろいろありそうです。
少し時間が出来たので、ちゃんと読んだことのなかった荀子を読み始めたところですが、冒頭からして両立するのが難しい命題が含まれていますね。(「不臨深谿不知地之厚也」と「福無張於無禍」が続いている場合にはどうとってよいものやら、などなど)
この二文が双方どれぐらいにアンビバレントな性格か(あるいは全くそうでないのか)は、複数の解釈問題を経なければ、いちおうの答えも出せませんが、ともかく「MFPD」事例の論理的間違いのように明白に誤った論理付けでなくても、「経験則に照らしてこれはないよな」というような理屈があまりに世の中には多いように感じます。
荀子がそれを伝えるために、わざわざ頓智のような書き出しを作ったのかどうかなどはよくわかりませんが、昔も社会は相当に複雑だったでしょうから、あえてそれを文中で実践したーーーのかもしれません(現代の秀才にそのウィットがあるのかどうかは知りません)。
投稿: 江藤貴紀 | 2015年10月19日 (月曜日) 22時08分
江藤貴紀さん
世界的には幹部従業員や経営陣による組織犯罪が増えているように思います。
従来考えられていたような法的スキームでは全く対処できません。
投稿: 夏井高人 | 2015年10月12日 (月曜日) 20時31分
夏井高人様
この件のハッキング被害に限りませんが、実は内部への侵襲が大きい打撃を受けていたのに、その被害についての自覚症状というのは意外にないですね。後から気づいて(不幸なら手遅れ)というのが相当に多いです。
幸い、専門職についている友人の紹介で、この分野で異才をはなつ専門職(いわゆる「半グレ」タイプの相手が好きでかつ得意、という秀才には希な特殊嗜好の持ち主)の世話になれたのですが、執行機関がとてものんびりしていて、あれれと思っています。
いかなる事件においても、①被害者が認知するか②オーソリティの職員が情報を適切に収拾しているか、という2段階の壁があるため、リサーチをしても暗数というのは常につきまとう問題ですね。
ともかく、容易に予見される各種サンクションの「後先を全く考えない」人間は複数いるのだなと奇遇にも近日身をもってしりました。別にある種のプロ、とかではなく、単に何にも考えていないだけというタイプです(かつての職場で、嫌と言うほどたくさんご覧になられたかと思いますが・・・)
冷戦時代の、MADという教条が活きていた時代の世界はまだ牧歌的だったのかもしれません。
投稿: 江藤貴紀 | 2015年10月12日 (月曜日) 13時25分