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2015年10月16日 (金曜日)

篠田謙一『DNAで語る 日本人起源論』

下記の書籍を読んだ。

 篠田謙一
 DNAで語る 日本人起源論
 岩波書店 (2015/9/18)
 ISBN-13: 978-4000291736

一般向けに書かれた書物で,とてもわかりやすい。

内容に関して,縄文人+弥生人という二層構造で考えるのではなく,もっと複雑な多重構造になっているということを示している点は全くもって同感だ。

仮に騎馬民族征服説のような考え方をベースにする場合でも,神武東征が1回しかなかったと考えるのはかなり愚かな考え方で,何度もあり,その度に禅譲(国譲り)があり,それらが積み重なっているのに神話上では1回しかなかったかのように書かれていると考えたほうが合理的だと思う。このことは,本書に示されている日本人の遺伝子構造の多重性によっても裏付けられる。

本書では,もっと正確な認識を得るためには中国東北部における古代人骨のDNA調査が必要だということも指摘されている。これも全く同感だ。中国ではそのような調査がなされているし関連書籍や論文が出ており,既に何冊か読んだ。問題は,その精度にある。

慎重に検討を進めなければならないのだが,おおっざっぱに言えば,日本の古代史との関連では,中国・春秋戦国時代に対応する時期に形成された層を構成しているものは明らかにベトナム~巴・楚(呉)のものであり、中国・漢時代以降においては山東半島~遼東半島付近の地域が最も重要だと考える。

そして,燕~魏・晋~北魏そして隋・唐に至る鮮卑族の歴史は,日本国の歴史と非常に密接な関連を有するとの感をますます深めることができた。

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