川西宏幸『同型鏡とワカタケル-古墳時代国家論の再構築-』
下記の書籍を読んだ。
川西宏幸
『同型鏡とワカタケル-古墳時代国家論の再構築-』
同成社(2004/11/5)
ISBN-13: 978-4886213006
非常に勉強になった。
この問題については、様々な見解があって難しい。何しろ随分と昔のことだ。
客観的な考古資料はとても重要なもので、これなしには単なる空想だけに終わってしまう。
しかし、それでも空想しなければならない部分が残る。
例えば、同一の鋳型からつくられた刀剣が全国各地で発見されたと仮定する。鋳物なので実戦用ではないことは確実に証明できる。しかし、そのあとが問題となる。
なぜなら、「同一の鋳型からつくられた刀剣が全国各地にある」という事実だけで、その伝播の経路を確定することができないからだ。
一方の仮説としては、全国各地に豪族が既に割拠しており、その中で朝廷に恭順の意を表した者だけに褒美としてその刀剣を賜ったという仮説は成立可能な仮説だろうと思う。一般的には、誰でもそのように考えるかもしれない。
しかし、他方の仮説として、ある将軍が配下の部下に同一の鋳型からつくった刀剣を授け、それを権威の象徴として示しながら全国を征服せよと命じ、征服に成功した占領地に造営された墳墓にその刀剣が埋葬されたという仮説も十分に成立可能なのだ。しかし、普通はそのようには考えないだろう。
だが、可能性の問題としてはどちらの仮説も成立可能なのだ。一方が他方に対して圧倒的に有利な仮説にはならない。
だから難しいのだ。
そんなことを考えながら読了した。
| 固定リンク
コメント