« マイナンバー(共通番号) | トップページ | 法律家のルーチンワーク的な仕事は人工知能によって処理されるようになるか? »

2015年8月 9日 (日曜日)

Hans-Joachim Cremer, Human Rights and the Protection of Privacy in Tort Law

下記の書籍(ペーパーバック版)を読んだ。

 Hans-Joachim Cremer
 Human Rights and the Protection of Privacy in Tort Law - A Comparison between English and German Law
 Routledge・Cavendish (2011)
 ISBN-13: 978-0415695596

EUには日本の個人情報保護法制とは全く比較にならないほど強力な個人データ保護法制が存在するが,その中でもドイツの連邦個人データ保護法は非常に強力なもので,とりわけ,個人データに関する人格権を基本的人権の一種であると同時に行政法上でも民事法上でも実体のある権利として法定していることから,EU中で最も厳格な法制をもつ国だと理解されている。他方,英国のプライバシー保護法制は若干ぬるい。とは言っても,日本にいてそれぞれの国の法令の条文や注釈書等を読んでいてもなかなか理解しにくいところがある。

EUでは,更に人権裁判所が存在し,加盟各国の裁判所の判決等との相互関係についてイマイチ理解しにくいのだが,これは,日本と基本的な法制が異なるのでやむを得ない。

では,比較法的な研究書がたくさんあるかと言えば,必ずしも多くはない。

ちょっと調べものをしていたら,本書の中に参考になることが書いてあるということがわかり,購入して読んでみた。

英文で書かれたもので,英文それ自体の難易度としては辞書なしで読めるレベルのものなので助かる。日本の大学生の外書購読等の科目教材としてちょうどよいくらいのレベルではないかと思う。

私が知りたかったのは,Caroline von Hannover事件判決に関するEUの法律家の評価だった。この書籍の第2章に詳しく書いてあった。

Caroline von Hannover事件は,日本の(個人情報保護法関連またはプライバシー関連の)論文等ではあまり引用されることがない。しかし,事件それ自体及び欧州人権裁判所の判決はとても興味深いものだと思う。

 Court rejects Princess Caroline von Hannover's human rights complaint
 COE Human Rights Europe: September 19, 2013
 http://www.humanrightseurope.org/2013/09/court-rejects-princess-caroline-von-hannovers-human-rights-complaint/

 German courts' decisions respected private and family life of Princess Caroline von Hannover
 http://www.coe.int/t/dghl/standardsetting/dataprotection/Judgments/Judgment%20von%20Hannover%20no.%203%20%20v%20Germany%20%20National%20courts%20respected%20private%20life%20of%20Caroline%20von%20Hannov.pdf

本書中に示されている参考文献や関連判例などをたどって,更に深く検討してみたいと思う。

|

« マイナンバー(共通番号) | トップページ | 法律家のルーチンワーク的な仕事は人工知能によって処理されるようになるか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« マイナンバー(共通番号) | トップページ | 法律家のルーチンワーク的な仕事は人工知能によって処理されるようになるか? »