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2015年8月 9日 (日曜日)

シンガポール:建国50年祭

下記の記事が出ている。

 Singapore marks 50 years since independence
 BBC: 8 August, 2015
 http://www.bbc.com/news/world-asia-33815132

以前,シンガポールを何度も訪問したことがある。

シンガポールは,とても小さな国で,地政学的に極めて厳しい条件の下にある。しかも,英国領だった当時の英国の統治方針の結果,現在のシンガポールには,中華系,インド系,マレー系の3種類の人々が国民を構成しており,しかも,国際国家としてかなり多数の外国人が常に居住している。その統治は難しい。

しかし,シンガポールは,驚くべき高成長を遂げ,世界のトップ国家の一つになった。

インド系の人々が多数存在するので華麗なヒンヅー寺院をみることもできるが,基本的には道教を信ずる華人系の人々が国の経済を握っているように見える。そのせいかどうか,市街地では,風水によって説明可能な場所が圧倒的に多い。おそらく,そのようなものとして設計されているのだろう。ちなみに,シンガポールにおける道教と風水と儒教は渾然一体となっており分離して考察することが難しいように思う。これは,日本国における道教と風水が神道と密接不離の関係になっているのと同じではないかと思う。

シンガポールの華人系の人々と会って話してみると,中国人だという意識は全くなく,シンガポール人だという自己認識をもっている。ここらへんのところは日本とよく似ている。要するに,とても賢いのだと思う。

儒教的というべきかどうかは知らないが,刑罰の執行は極めて厳正になされる。

レストランは,庶民向けから高級店まで様々なものが多数あり,どこも衛生的で美味しかったという記憶がある。シンガポール滞在中の食事で嫌な思いをしたことが1回もない。

さて,一般に,地政学的な厳しさをもつ地域は世界中に多数あり,東アジアにも当然存在する。しかし,その厳しさを乗り越えるだけの知性をもつ人々が国民の中で指導的地位にあるのかどうかによって,その国の運命が大きく左右されるということなのだろう。

シンガポールを繁栄へと導いたリークアンユー氏は,客家の流れを汲む人で,日本軍によるシンガポール占領当時には処刑されかけたこともあるという。その後も様々な苦難を乗り越えながら,国を独立させ,汚職を徹底的に排除し,世界規模で企業活動を活発化させ,シンガポールを一流国家へと成長させた。極めて優れた指導者だったと思う。

(追記)

日本国の古い氏族名の中には「客家(はっか)」と同じではないかと推定されるものがある。「百」や「白」は類似の発音とすることができる。

また,「坂上氏条逸文」には、七姓漢人の1つとして「李」がある。

色彩としての「紅」と「白」を組み合わせて用いるのは中国の古い時代の様式の流れを汲むものではないかと思う。日本国の国旗とシンガポールの国旗が赤色と白色だけで構成されているのはそのことによるのだろう。日本国の国旗において「丸」または「旭日」が用いられるのは,天照大神または太陽神に対する信仰の流れを汲むもので,より古い歴史をもつものではないかと推定している(鏡や菊華も,同様に考えることができる。)。

(追記2)

日本国における「白」について,「しら」と読み,新羅に由来するとの見解がある。確かに,朝鮮半島にあった統一新羅が滅亡した際の亡命者の子孫の中にはそういう場合はあり得るかもしれない。しかし,全てそうだと解する見解は明らかに誤りだと思う。日本国の歴史は重層的になっており,そんなに単純なものではない。それゆえ,脳の中に非常に広大な記憶空間を確保できない人の場合には,そのことを理解すること(そのように思考すること)それ自体が極めて難しいことは否定しようがない。

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コメント

江藤貴紀さん

無知・無教養で直情的な者のほうが奴隷化しやすいですからね(笑)

投稿: 夏井高人 | 2015年8月12日 (水曜日) 19時41分

夏井高人様

中国の簡体字も、やはり同様の狙いがあるだろうなと思っています。

なお逆パターンで、不自然なまでに持ち上げられる言語やメディアがありますが、それも「言うことを聞きやすい人」を量産するためにやられてるのだろうなーと愚考します。

投稿: 江藤貴紀 | 2015年8月12日 (水曜日) 19時30分

江藤貴紀さん

繁体字(旧漢字)を自由自在に使いこなせない人は,要するに無教養な人なのだと思います。

自らバカになり奴隷とされるために繁体字から逃げているとしか思えません。

これは,中国(大陸)でも同じです。簡体字の普及により,自分達自身の祖先のことを記録した過去の文献を読めなくなってしまいました。

台湾の人は偉いです。


投稿: 夏井高人 | 2015年8月12日 (水曜日) 18時49分

夏井高人様

シンガポールは、ごく僅かしか滞在したことがないのですが、華人がマジョリティで、さらにリークアンユー氏も華人あったにも関わらず多言語政策(特に英語の重視)をしている国ですよね。

うがった見方をすれば、他民族の融和や貿易上の便宜という目的だけでなく、中国人と別の(また隣国のマレーシア、インドネシアとも異なる)「シンガポール人」というアイデンティティを生み出す狙いもあったろうと思っています。

ベトナムも漢字文化圏にもとは属していたにも関わらず、漢字を完全に捨てた「ベトナム語」を公用語と定めましたよね。

これらは、①過去の歴史資料へのアクセスを難しくするという負の面がある一方で②漢字文化圏に属する他国への情報漏洩を防ぐという国防の意味もあり、③また指導者層にとってはそれまでの歴史と断絶した「自分たちに都合のいい歴史」を作ることが出来るという効果をもたらしました。

韓国が、漢字を捨ててハングルを国語とした理由も同様と考えています。

なお日本の戦後、言語政策はデメリットしかないとようみえます。

すなわち、仮名遣いを改めたために、戦後世代一般が、過去の文献の読解に障壁を抱えることになりました(この政策のメリットが薄いことは当時の為政者にとっても、容易に予見可能だったはずで意図的な「歴史浄化」政策だったと推察しています。)。

古今東西を問わず、人間がやることにはやはり共通項があるんだなあ、と個人的には思っております。

投稿: 江藤貴紀 | 2015年8月12日 (水曜日) 18時05分

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