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2015年7月12日 (日曜日)

宮本一夫『中国古代北疆史の考古学的研究』

下記の書籍を読んだ。

 宮本一夫
 中国古代北疆史の考古学的研究 
 中国書店 (2000/2/28)
 ISBN-13: 978-4924779501

随分と勉強になった。

良い研究書だと思う。

私がこれまで考え続けてきた古代史の想像を裏付けるような考古学上の知見が満載という意味でも大きな感銘を受けた。

特に興味をもったのは中国国内の古代遺跡で出土した動物の骨などの遺物を分類整理した部分(63頁)で,ここには「ニホンジカ」と「ツキノワグマ」との記載がある。特に言うまでもないことだろうと思うが,結局,日本に存在する大型の哺乳類の多くは,古代において中国大陸から移入されたものが逸出・野生化したものの子孫ということになる。

私は,動物学について苦手なので,主に植物についてずっと調べてきた。その結果,日本で野生植物とされ種の保存法等で保護されている植物の中のかなりの部分が本当は園芸交配種であり,それが逸出・野生化したものの子孫だろうという結論を得ている。動物についてもそうだということは,おそらく,鳥類についても同じことを言うことができる。とりわけ,トキについては,100パーセント確実に中国から移入されて飼育されていたものが野生化し,それが絶滅するに至ったのだと考えられる。タカなどの猛禽類についてもその可能性が高い。

他に,ドルメンに関する記述や斉の墓制についての記述等に特に興味をもった。地下式の斉の墓室をそのまま上下(天地)をひっくり返したような形にすると(=凹を凸にすると),前方後方墳になる。ドルメンについては,戦前に陸軍が調査・測量した結果に基づく研究書(日文)や中国南西部の少数民族の墓制に関する研究書(中文)等を多数読んできたのだが,更に興味を深めつつある。

以下はあくまでも一般論なのだが,従来,諸学問はばらばらに細分化され,相互に干渉しないという暗黙の了解があったと思うし,また,諸学問全体に精通できるような優れた研究者が極めて乏しかったため,実際に干渉することもなかったのだと思う。しかし,現代においては,データベースという極めて強力な武器がある。人間の記憶力では到底無理なことでもデータベースに記録することは可能で,それを随時検索して考えることは天才的な頭脳をもっていない者でも可能なことだ。

学問方法論は根本的なところで大規模に改変されるべきだし,従来のような蛸壺型の学問領域設定をいったんリセットしてゼロにしてしまったほうが良いと考える。

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