ネットワーク社会の文化と法・・・メイキング
1997年に『ネットワーク社会の文化と法』を出版した。
正味で1か月ほどで書きあげた。
それまでの約10年くらいの間にずっと考えていたことをまとめるだけだったので早かった。
問題はそれからだ。
出版社は,難色を示した。当時,既に出版業界は斜陽化しはじめていたのだろうと思う。
私は,「版下原稿を全部つくるので,あとは印刷するだけということでどうか?」と提案した。出版社は了承した。
当時非常に高価なプリンタだったCanonのレーザーショットの最新型を購入して画像の原画を作成し,一太郎と比較するととんでもなく性能のよくなかった当時のWordでせっせと原稿を書き,レイアウトから何から全部決めて印刷し,印刷済みの原稿を出版社に提供した。
出版社は,それを写真製版することになった。
いよいよ出版の直前になって,担当者から連絡があったので出かけてみると,「ここまで全部やってもらうことになると当社としては何もやっていないことになる。せめて書籍のカバーのデザインだけはやらせてもらいたい。」とのこと。私は,全部一任とし,表紙カバーは出版社で作成した。
そうやって出版したので,出版社がやったことは写真製版,印刷と表紙カバーの作成だけ,ということになる。
ところが,そのようにして作成した書籍のゆえに重大なバグがあることにあとで気づいた。
「対する」というところがタイプミスで「t」が抜けてしまったため,「愛する((t)aisuru)」になってしまっていたのだ。初刷版はそのようにして識別することができる(笑)。
さて,印刷・製本・出版が完了したので,「情報文化論」という授業でテキストとして用いた。
それから20年くらいたった。
先日,初めての講義を受講していた元学生から連絡があり,都内某所で久しぶりに会った。3人組の学生で,全員左利きだった(3名中の1名は両利き)。私が左利きだということを見て私に好感をもったらしく,自ら「レフティーズ」と称して,しばしば私のところにやってきた。決して左翼ではなく,単に左利きということなのだが,当時の世情としては誤解される可能性があった。しかし,私は,不安を与えてはいけないと思い,笑ってごまかしていた。3人とも,とても立派なところに就職できた。
20年ぶりに会ったのは3人組の中の2名なのだが,「愛する」のミスタイプを覚えていて,話題となった。
とても嬉しかった。
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