夏井高人「艸-財産権としての植物(3)」
明治大学法学部の紀要である法律論叢に連載している「艸-財産権としての植物」の続きを執筆し,再校を終えている。
本来であれば2015年7月末日に法律論叢88巻1号所収の論説として刊行予定だった。ところが,さきほど担当者から連絡があり,2015年8月5日ころに刊行となる見込みとのことだ。
ところで,この「艸-財産権としての植物」は,研究代表である中山信弘先生の御慈悲により多額の研究予算を頂戴して研究している大型研究の成果物の一部だ。しかし,この大型研究は2016年3月で研究終了となるにもかかわらず,研究年度内にはこの論文を完結できそうにない。そこで,「艸-財産権としての植物(3)」では結論部分を先取りして脚注内でごく簡潔に示唆する形式で示すことにした。
結論には自信があるし,比較的近い将来に100パーセント確実に世界的なレベルで通説になると確信しているのだけれども,この分野に関する日本の古典的な通説・判例の相当部分を徹底的に破壊しながら論証しないといけないので,論文の執筆には手間がかかる。
それはさておき,「艸-財産権としての植物(3)」の目次構成は確定しており,下記のとおり。
一 はじめに
二 動産と不動産の定義
1 有体物と無体物
2 不動産と動産
2.1 封建制度の下における土地の重要性に関する見解について (以上87巻2・3号)
2.2 不動産のほうが動産よりも価値が高いという点について
2.3 土地は容易に移動しないという点について
3 土地の定着物
3.1 物体としての土地・土壌
3.2 土壌中に含まれる生物
3.3 植物の特性(以上87巻6号)
三 裁判例
1 稲立毛以外の艸(草)に関する裁判例
1.1 所有権の帰属に関する裁判例
1.2 使用・収益に関する裁判例
2 稲立毛に関する裁判例
2.1 土地とは別の動産とは認めない裁判例
2.2 土地とは別の動産と認める裁判例
3 立木に関する裁判例
3.1 立木法制定前の裁判例
3.2 立木法制定後の裁判例(以上本号)
なお,情報財の刑事的保護の研究成果として同誌に連載している「サイバー犯罪の研究」については,情報財関連の部分に関する限り,年度内(2016年3月末日まで)に完結させることができる見込みとなった。次年度以降は,情報財とは必ずしも関係のない部分に重点を置いて「サイバー犯罪の研究」を継続執筆し,できれば数年内に全体を完結させたいと思う。
「情報財の定義」に関しては,既に明治大学社会科学研究所紀要において「情報財-法概念としての意義-」として,その研究成果を示している。
[追記:2015年8月5日]
本日,印刷物が届いた。形式的な発行年月日は2015年7月31日となっている。
正式の書誌情報(掲載場所)は「法律論叢88巻1号37~87頁」。
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