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2015年6月27日 (土曜日)

米国:連邦最高裁が同性婚(same-sex marriage)を連邦憲法上保障された基本的人権の一種であり合法と認め,これを違法とする州法を違憲とする判決

下記の記事が出ている。

 US Supreme Court rules gay marriage is legal nationwide
 BBC: June 26, 2015
 http://www.bbc.com/news/world-us-canada-33290341

 Supreme Court rules in favor of same-sex marriage nationwide
 CNN: June 26, 2015
 http://edition.cnn.com/2015/06/26/politics/supreme-court-same-sex-marriage-ruling/

 Supreme Court Orders States to Recognize Same-Sex Marriage
 Time : June 26, 2015
 http://time.com/3937244/supreme-court-gay-marriage-decision/

この判決は,米国のものなので,日本に対して直接の影響をもたらすものではないと考えられるかもしれない。しかし,仮に婚姻における相手方(配偶者)の性の選択の自由が基本的人権の一種だとすれば,自然権説では日本国においても基本的人権の一種であるはずだということになる。

すると,日本国憲法24条の取扱いが問題となる。

日本国憲法24条2項は,「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と定めているので特にコンフリクトの問題が生ずることはなさそうだ。

ところが,日本国憲法24条1項は,「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定めている。同条1項が「両性の合意のみに」と規定しており,「両性」が「男女」を意味すると理解する点において異論が全くない以上,「同性の合意」による場合には婚姻の権利がないと解釈するしかないからだ。

この場合,「両性」を「双方という意味だ」と解釈することは全く不可能ではない。しかし,日本の婚姻に関連する法令は,戸籍法を含め,全て異性間の婚姻だけを前提に設計されており,そのように運営されている。だから,憲法24条1項の「両性」を読み替えるというだけでは何の解決にもならない。

また,現行法の解釈だけではなく,憲法論として「婚姻の自由」を論ずる場合,同性婚の自由を前提にする限り,「婚姻」の定義について,「繁殖を目的とする性的結合の自由」という概念は捨てなければならなくなる。単に「性的結合の自由」を保証するための制度的保障の一種として理解するのが妥当ということになるのではなかろうか。

そうなると,いずれ「婚姻」という概念それ自体が不要となり,「性に関する自由主義」が主流となるという世界史的な流れが生ずることになるのかもしれない。

そのような社会では,「夫婦」を守るという社会的要請は希薄化し,未成熟な子供の権利と自分で収入を得ることのできない者を守るために(男・女・その他の性の別を問わず)一定の社会的保護を与えるという意味での家族法だけが残るということになりそうだ。ここでは,「家族」という側面が希薄化し,社会保障法の一種として観念されるようになる。

私自身は,サイバー法の守備範囲内にあるものとして,「人間と人間以外の要素との性的結合の自由は規範として成立し得るか」という課題について興味をもち,これまでずっと研究を重ねてきた。

ますますもって真面目に取り組む必要性が出てきたようだ。

(追記)

基本的人権について,自然権説を採らない場合,憲法24条の問題は比較的簡単に説明をつけることが可能となる。

例えば,基本的人権について,各国の制度設計(constitution)の一部に過ぎないという考え方を採る場合,憲法の条文に定められていない基本的人権は(その国においては)存在しない。具体例としては,中華人民共和国では私有財産権を基本的人権とは認めていないので,あくまでも法学理論上では基本的人権としての私有財産権が存在しない(社会学または政治学の観点からは全く別に考察すべきことは言うまでもない。)。

そして,このような考え方を前提にする場合,日本国憲法の定めている日本国の制度設計(constitution)としては,異性間の婚姻しか認めていないと解釈することになるだろう。

ただ,「世界人権宣言」を含め,基本的人権に関する国際的な規範の法的性質との関連を含め,かなり面倒な議論はある。また,「国際人権規約」の40条bとの関連を考慮すると,更に面倒な問題がある。「世界人権宣言」の16条は,「婚姻」を異性間の婚姻だけに限定しているとは読めない。

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