鎖国令は存在しなかった?
しばやんの日々に下記の記事が出ていた。
江戸幕府がポルトガルと断交した後に海外貿易高は増加した
しばやんの日々:2015年6月2日
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-392.html
私も「鎖国令」という行政文書は歴史上存在しなかったと思う。
従来,「鎖国令」という用語は,外国との間の貿易・交通を厳格に制限する一群の行政政策の総称として用いられてきたので,それ自体としては間違っていない。しかし,「鎖国令」という単独の行政文書が存在したかのような誤解を招くという点では,確かに,別の用語を用いたほうがベターだろう。
では,鎖国状態は存在しなかったのかというと,やはり存在した。だからこそ,ペリーの「黒船」に象徴されるように,海外の勢力は,港湾等の利用等について徳川幕府に強く要求し,威力を示すこともあった。もし鎖国状態がなければ,そのような歴史上の出来事が発生することもあり得ない。
[追記:2015年6月6日]
「徳川幕府による重商主義的管理貿易政策が本質的に失敗を免れない構造をもったものであることが(論理必然的に)絶対王政を形式的に真似た国家体制の再構築の要請を促進し大政奉還を導くことになった」という史観(従来,国内問題としてのみ語られてきた幕藩制から大日本帝国形成までの動因を国際経済論の文脈で考察する史観)は成立可能ではないかと思うが,私の残された人生の時間の間にその研究を尽くすことは到底不可能なので,若い人々に委ねる。
それはさておき,「鎖国」という概念の発生について先人の業績があるようだ。
小堀桂一郎『鎖国の思想 ケンペルの世界史的使命』(中公新書,1974年)
大島明秀『「鎖国」という言説-ケンペル著・志筑忠雄訳『鎖国論』の受容史』(ミネルヴァ書房,2009年)
これらの書籍はまだ読んでいない。時間をみつけて読んでみようと思う。
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