遠藤邦彦『日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層』
下記の書籍を読んだ。
遠藤邦彦
日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層
冨山房インターナショナル (2015/3/20)
ISBN-13: 978-4905194897
とても勉強になった。
紀元前6000~7000年ころ(縄文時代)の海水面が現在よりもはるかに高いところにあったという事実が綿密な地質調査結果の検討と海産有孔虫化石や貝塚から発掘される海産貝類等を用いて科学的に証明されている。
非常に良い本だと思う。
現在,海抜10メートル~20メートル以下の低地に住んでいる人々が,本当は海の上に浮かんでいるようなもので,もし巨大地震に伴う巨大津波が発生すれば恐るべき波浪に洗われ破壊されてしまう可能性がある土地だということを理解することができるだろう。そういう場所には,無論,重要施設を構築してはならない。このことは,真の防災というものを考える場合,非常に大事なことだ。
問題は,紀元後200~600年ころの海水面をより細かく確定しないと,日本の古代史を明確にすることができないということに尽きるのだが,この点に関しては,この書籍でもまだ完全に証明されているわけではない。今後,より精密に証明するための科学的手段が開発されることになるだろう。そのとき,初めて日本の従来の日本史の中の荒唐無稽な部分が科学的に証明されることになる。かつて海の中にあった場所には耕地や村落や都市や国家などあるはずがないのだ。
私見としては,紀元後200~600年ころの当時は,寒冷化のために次第に海水面が下がる過程の中にあったと考えているが,当時は海岸堤防などなかったので,満潮時には現在の海抜10~20メートルくらいのところまで海水で洗われるということが普通にあったのではないかと推定している。台風等により高浪が押し寄せるときもそうだ。つまり,特に太平洋側では海抜10~20メートルのくらいのところは人間が居住し利用することができない場所だったと推定している。だから,現在の海抜0~10メートルくらいの地域に邪馬台国の所在地を推定するような見解等は,物理的にあり得ないと考えているのだ。
現実的な問題として,日本だけではなく,かつて,東アジア一帯でほぼ均等に海水面が高かったと推定されるので,高校で使う歴史地図は,根本的に書き換えられなければならない。
ちなみに,日本の鎌倉時代ころをピークとする寒冷期はその後温暖化に向かっていたので,人間の活動(CO2排出)と無関係に再び海水面が上昇する可能性はある。このことは,人類が存在していても存在していなくても全く関係のないことなので,人類の努力は全て無駄だ。
あくまでも一般論だが,無駄なことが無駄ではないと思いこませてお金を払わせる行為は,それを知っていてやっているのであれば,詐欺行為となる。それを知らないでやっている場合には,詐欺行為にはならないが,過失による不法行為として損害賠償責任の原因となり得る。
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