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2015年2月23日 (月曜日)

Robert P. Merges, Justifying Intellectual Property

某氏から教えていただき,Amazonに注文していた下記の書籍が届いたので早速読んでみた。

 Robert P. Merges
 Justifying Intellectual Property
 Harvard University Press (2011)
 ISBN-13: 978-0674049482

この書籍の存在は知らなかったのだが,内容的には,既に検討済みで熟知していることばかりだったので簡単に読むことができた。英文それ自体は極めて平易なので,日本語訳になっているカントやロックで挫折し心の折れてしまった人でも容易に読むことができると思う(一般に,よく理解できていない人の訳文はわけがわからない。この場合,読者の頭が悪いのではなく,訳者の頭が悪いのだ。)。

以下は,独善的な感想文だ。

哲学書ということになっている割合には哲学的な深みはあまりない。

また,事実としての現在の知的財産法制は,「たった一人の者が世界を支配すること」を是とし,単なる私利私欲を正義として法的に保護するための社会システムなのだが,本書で述べられている「正義(配分的正義)」は,現実を一応度外視した上で,あるべき姿としての当為を求めるものだと評価することができる。その意味で少しも実務的な書籍ではない。

ただ,「知的財産(情報財)の独占がなぜ許されるのか?」について,正面から取り組んだ書籍が非常に乏しく,単純に事実先行だけで現在の法システムが形成されてしまったという現状を批判し,あるべき姿を提示するためには,このようなアプローチも必要なことは言うまでもなく,その意味で学術上の価値のある一冊ではないかと思う。

現実問題として,資本の力は常に理想や哲学を打ち負かすので,誰が何を言っても無駄という面はある。

しかしながら,知的財産権だけに限定するのではなく,そもそも「権利は実在するのか?」という非常に古くから議論されてきたにもかかわらず現代の法学教育では全く講じられなくなってしまった重要課題について,その重要性を再認識させる上でも貴重な書籍なのではないかと思う。

私は,全く別のアプローチから研究を進めてきた。既にその研究成果の一部を公表しつつあるが,今後は,この書籍に書かれていることも踏まえ,更に研究を深めようと思う。

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