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2015年2月24日 (火曜日)

渡邉英幸『古代〈中華〉観念の形成』

下記の書籍を読んだ。

 渡邉英幸
 古代〈中華〉観念の形成
 岩波書店(2010)
 ISBN-13: 978-4000228978

「中」、「華」、「夏」のとらえかたについては,古来,諸説ある。

文化の実相についても歴史的な変遷があるので,名だけが残っておりながら,その名の下に現在まで中国が存在していることから非常に厄介な問題が生ずることがしばしばある。何しろ,その住民は,たとえ北方侵略民の子孫であることが家系上でもDNA上でも否定不可能なレベルで完全に明白である場合でさえ,「中華(夏華)」によってアイデンティティを維持している。つまり,「中華」が形骸として存続しているのが現在の中国だと考えることができる。

「夏」の実相は,実は,中国各地の少数民族や日本の文化の中に残存していることが多いので,それを丹念に調べたほうが古代の中国の様子をよりよく理解することができる。

しかし,現実に現代の中国が存在する。

そこで,「中華」という観念のルーツを確定することが必要になる。

中華思想は,古代ギリシアの思想と類似性がある。おそらく,根は同じで,西方からやってきたものだろう。

発生の時期については,古来論争になってきた。

本書では,魏晋南北朝のあたりの時代を想定して論理が展開されている。細部については疑問もあるけれども,結論においては私見と同じだ。

中国の歴史の中で魏晋南北朝という時期はとても重要だと思う。

しかし,日本ではそれほど細かく研究されてきたわけではなく,この時代の正史の和訳も,『三国志』を除いては,ほとんど出版されていないというのが実情だ。

これは,日本の古代と直結する何かが存在しているからだと推定している。

明治時代~第二次世界大戦終戦までの日本政府は,それを明かされると非常に困るので,密かに,学問研究に対する抑圧政策を採っていたのではないかと思われる。

また,学者の中でも,漢や唐を好み,それ以外の時代の研究者を馬鹿にするようなところがあったのに違いない。まさに象牙の塔そのものだと思う(←漢や唐の研究の重要性を否定する趣旨ではない。)。

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