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2015年2月21日 (土曜日)

Alan F. Westin, Privacy and Freedom

大学の図書館にあったので,下記の書籍を読んでみた。分厚い書籍なので,読了するのに少し時間がかかった。

 Alan F. Westin
 Privacy and Freedom
 Atheneum (1967)

この書籍は,政府(警察等)によるサーベイランスが電子的な道具を用いて実行されるようになったという事実を踏まえ,それによる市民のプライバシーをいかに保護するかを論じたものだ。

権利論としては,ドイツ法と同じような意味での自己決定権を基本として,ある情報をプライバシーの領域内に隠しておくかプライバシーの領域の外へと開放するかの区切りを,本人の「事前の承諾」にかからしめるべきだとの主張がなされている(文脈的には,刑事訴訟における自己負罪の禁止や自白強要の禁止等と関連するものとして述べられている。)。

他方で,政府によるサーベイランスをいかにコントロールすべきかという点については,連邦法による法規制の強化が提案されている。個人の力(権利)の行使では全く無理だということがそのような発想の根底にある(本書において,「コントロール」はサーベイランスを社会的に抑止するという社会制度論の文脈で用いられており,個人の管理権を指していない。)。

いずれも,公権力対市民という典型的な憲法論の枠組み内での議論であり,市民対市民の関係に関する論文ではない。

この書籍が書かれた当時に存在した各種電子機器類はまだまだ原始的なものだったはずだが,そのような技術から生ずる法的課題の本質は同じなので,現代においても十分に通用する書籍ではないかと思う。

非常に勉強になったし,私の研究課題との関係でも私見の補強となる見解が多数含まれている一方で私見に反対する見解を支持するような要素は全く含まれておらず,結果的として,全部読んでみてよかったと思った。

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