杉浦康平『宇宙を叩く-火焔太鼓・曼荼羅・アジアの響き』
Amazonに注文していた下記の書籍が届いたので読んだ。
杉浦康平
宇宙を叩く-火焔太鼓・曼荼羅・アジアの響き
工作舎 (2004/10)
ISBN-13: 978-4875023807
非常に面白い。
写真資料等が豊富で,文字だけの書籍ではわかりにくいことがよくわかる。
写真の確実性を他の資料等と照合しながら丁寧に読んでみた。
この書籍の中にはタイトルにある「火焔太鼓」のことも書かれているけれども,私は,「建鼓」に特に興味をもった。
建鼓の上についている装飾された天蓋のようなものは,日本の神社の御神輿のルーツだろうと思う。
古代においては,大きな輿に帝王が乗って行幸したのだと思うのだが,その輿にはこのような天蓋が乗せられていたのかもしれない。それをそのままミニチュア版にすると御神輿となる。
この天蓋のようなもののルーツは,古代中国の周の時代の祭礼にあり,それは更に夏の時代に遡ると思われる。
更にいろんなことを考えてみた。
この書籍によれば,建鼓は,周辺諸国に広がり,様々な地域で独自の変化を遂げつつ現代に至っているのだという。私も同意見だ。
私の故郷は岩手県なのだが,岩手県には鹿踊りというものがある。昔から北斗七星と関係すると言われている。『漢書』の「天文志」や『易經』等によれば,北斗七星は中国の古代思想における天帝と関係するものらしい。鹿踊では長く平たい竿のようなものを背後につけ,それをゆらゆらさせ,太鼓を叩きながら踊る。これは,まさに歩く建鼓なのではないかと思う。中国の夏か周のころの祭祀様式をそのまま継承するものかもしれない。
一般に,鹿踊りは,北方系のシャーマンの祈祷との関連が主として論じられてきた。
これは,差別主義的な歴史観と強固な先入観に起因する誤謬である可能性が極めて高い。
鹿踊りは,シベリア系や朝鮮系の文化ではなく,夏や周の祭祀文化が残り変化しつつも今日まで伝えられてきたものだと思う。
そして,このような「歩く建鼓」は,「さんさ踊り」として知られる岩手の伝統芸能へと変化したものではなかろうか。
さんさ踊りでは,美しい女性が太鼓を叩きながら踊り歩く。
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