近藤好和『日本古代の武具-『国家珍宝帳』と正倉院の器仗』
下記の書籍を読んだ。
近藤好和
日本古代の武具-『国家珍宝帳』と正倉院の器仗
思文閣出版 (2014/9/30)
ISBN-13: 978-4784217663
カラー写真を含め,図版が多数収録されている。
正倉院御物は,現在ではWeb上でも検索可能となっており,一昔前と比べると随分と改善されたものだと感心する。以前は,御物を目にすることのできる機会が非常に少なかった。
宮内庁:正倉院
http://shosoin.kunaicho.go.jp/
写真により,その姿を知ることができても,破片や断片等の場合には再現が必要となる。また,道具は道具に過ぎないので,その用途や使用方法等については別途考察しなければならない。
そういう意味では,専門家による検討結果を踏まえた書籍の重要性はますます高まるのではないかと思う。
近年,この関連の書籍の刊行が続いており,近々に別の新刊書が出るようなので,とても楽しみにしている。
雑感だが,正倉院御物の刀剣類を見ていると,古墳から出土する刀剣類とほとんど同じ形のものが含まれていることに気づく。
このことをどのように解釈するかについては各人各様だろうと思う。
ほぼ全てのタイプの刀剣類が揃っていることを重視し,朝廷が古墳の被葬者に複製品のようなものを賜ったのだという解釈は可能な解釈だろうと思う。
他方,有力軍事氏族が各地の豪族を攻撃・征服して亡ぼし,墳墓や氏神の社を暴いて奪いまわったコレクションが流れ流れて正倉院に集められたとの解釈も可能な解釈だろうと思う。この解釈の場合,簒奪を免れた運の良い刀剣類だけが発掘されていると解釈することになる。
私は,朝廷も各地の豪族(王)もそれぞれ持っていたのだと解釈している。
自前でつくった刀剣類もあるだろうし,中国から渡来した刀剣類もあるだろうし,無論,朝廷から賜った刀剣類も含まれていることだろう。
出土する遺物としての刀剣類や正倉院御物の刀剣類には,それぞれの固有の歴史があるのではないか,というのが私見だ。
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