« Eldor A. Paul (ed.), Soil Microbiology, Ecology and Biochemistry (4th Edition) | トップページ | 飛鳥で新たに発掘された遺構 »

2015年1月16日 (金曜日)

西 幹夫・黒川美富子『中国貴州省 少数民族の暮らしと祭り-苗族・トン族・プイ族・老漢族の村々を行く』

下記の書籍を読んだ。そして,多数のカラー写真として収録されているとても素晴らしい情景描写を堪能し,かつ,極めて高い学術的価値を有する詳細な画像記録部分を丹念に閲覧・考察した。

 西 幹夫(写真)・黒川美富子 (紀行文編集)
 中国貴州省 少数民族の暮らしと祭り-苗族・トン族・プイ族・老漢族の村々を行く
 文理閣 (2008/9/20)
 ISBN-13: 978-4892595752

秀でた良書だと思う。

この書籍が刊行されたのは2008年なので,それから既に7年も経っている。被写体となった村々・人々・文化が現在でも存続しているのかどうかは知らない。もし部分的にせよ消滅してしまっているとすれば,本当に貴重な写真記録だと言える。

日本の国内にも素晴らしい伝承文化が多数あった。

しかし,何百年も同じように伝えられてきたはずの文化でも,比較的最近の社会の急激な変化により,かなり変質してしまっている部分がある。

既に消滅してしまったものも多数ある。貴重な文化伝承地ほどダム開発等で村ごと全部消されてしまうことが非常に多いので,おそらく,文化を消すためにダム開発をし続けているのだろうと思う。そのダム湖の底には古墳や古代遺跡が眠っていることも珍しくない。これが国策というものなのだろうと思っている。民族浄化の一種と言える。

近隣の神楽などをみても,子供達は昔のような服装をしていない。運動服の上にはっぴを着ても全然ダメだと思うのだけれども,今の子供達に褌を着用させようとすると即座にしゃしゃり出てくるモンスター**が多数いそうなので,これまたどうにもならないのだろう。神社の神官は,伝承者が絶えてしまうよりはまだ良いくらいの気持ちで妥協しているのではないかと想像する。

特定の考え方をもった人々の圧力によって圧殺されそうになっている文化もある。しかし,そうした圧力をかけてくる人々には「観念」や「イデオロギー」のようなものは存在していても,文化と歴史というものが全くないのではないかと思うことがある。もし自分に確固たる文化と歴史があり,自分の文化と歴史に自信があるのなら,異なる文化や歴史を攻撃・批判したりすることはなく,悠然と構え,そして,相互に尊重するようになるはずだ。しかし,現実は異なる。悲しいことだ。

また,観光収入を増やすという目的からなのだろうが,やけに「つくりもの」的な「お祭り」が増えてしまったように思う。大規模なパレードが開催され,ユルキャラが出てくると,「げげ~~っ」という気分に必ずなる。ユルキャラの存在を否定する全く気はない。伝統的なお祭りには出てくるなと言っているだけのことだ。出てくるだけで雰囲気が壊れる。

私は,小さい頃に田舎の神社で目にしたような素朴なお祭りこそが本当のお祭りなのだろうと信じている。

中国の貴州省で行われている祭りにもまた観光化の波が押し寄せているかもしれない。最近別のところで見た写真には,ミニスカートのダンサーのようなものが写っていた。プロの歌舞団のようなものなのだろうと思う。これまた,とても悲しい気分になる。

お祭りは,文化の一部なので,それぞれの社会の構成要素として機能しているのでなければ意味がない。その意味で,本質的に排他的な要素を含んでいる。だからこそ良いのだ。

最近,この手の書物を読むことが多くなった。

『楚辞』を読んでいて文字情報だけではどうしても理解しにかった謎がみるみるうちに氷解してゆく。快感と言っても良い。

そして,とても勉強になる。

一般に,理論から事実をみて研究を始めるのではなく,事実を直視することから始め,もし事実の大量観察というプロセスの中で何らかの法則性を見いだすことに成功したならばそれを理論化するという手順を踏まなければ,そもそも研究になっていないと思うのだが,現実には必ずしもそうではない。

これもまた悲しいことだと思う。

|

« Eldor A. Paul (ed.), Soil Microbiology, Ecology and Biochemistry (4th Edition) | トップページ | 飛鳥で新たに発掘された遺構 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« Eldor A. Paul (ed.), Soil Microbiology, Ecology and Biochemistry (4th Edition) | トップページ | 飛鳥で新たに発掘された遺構 »