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2014年11月10日 (月曜日)

老衰学会

先日,某著名学会の有力理事者である某教授とその関連の話題で意見交換をした。

考えてみた。

老衰した学会には幾つかの共通点があると考える。

1:若い研究者が入会しにくい雰囲気があり,現実に若い入会者が皆無または乏しい。

2:理事者の中に現役の研究者ではなく退役者のような人が多く,理事会が過去の栄光にひたるだけのお茶飲み会化している。

3:ボス的な老人が支配している。

4:学会誌への寄稿や雑務の分担などの寄与が全くないのに,学会運営にとやかく口出ししたがる老人が少なくない。

無論,老人だからといって侮蔑または軽視する趣旨ではない。たとえ100歳を超えても現役でどんどん業績を出している研究者は尊敬に値する。

問題にしているのは,老害としか評価しようがなく,プラスの要素が全くみつからない人々のことだ。

学会とは,研究領域を同じくする研究者の同好会のようなものなので,当初の設立者のお仲間が全員同時に高齢化することは避けられないのだが,だからこそ,その弊害を自覚し,改善策を予め構築しておかなければならない。

そこには,「自分も老害しかない老人だ」と思われているかもしれない,または,そのように思われることになるかもしれないという謙虚な自覚が必要となる。

改善策はある。

1:一定年齢を超えたときは,学会運営から全て身を引き,若い人たちに学会運営を委ねる。そのために,理事者について定年制を設ける。

2:理事会の年齢構成が偏らないように,年齢区分に応じて適当な員数の理事を選出できるように規約を改定する。

3:過去数年間に全く論文を書いていない者は理事者からはずす。自動的にはずれるようにするため,規約を改定する。ここでいう業績には,叙勲や他の組織・団体等における役職・肩書等を含まない。あくまでも,当該学会の設立趣旨にそった新規性のある有益な論文等を生産できているかどうかだけが問題となる。

4:自分が老人になったと自覚している者は,学会費の負担など金員の支出により学会を支援し,意見を求められない限り,一切口出ししないよう,肝に銘ずる。

ちなみに,私は,いかなる学会においても,理事者にならないことに決めた。

まだ50代だが,そう遠くない将来に60歳になる。健康上も万全とはとても言い難い。自覚はある。周囲に迷惑をかけることになるので,責任ある立場にたつことは避けたい。以前,健康上の理由その他の原因が重なってしまい,現実に学会運営に迷惑をかけたことがあり,心からお詫びしたいと思い続けている。

また,それでなくても自我の強い人間だと思われているので,私が存在しているだけでやりにくいと感ずる人がいっぱいいるだろうと思う。誤解の部分もあるのではないかと思うが,そう感ずる人が存在することは事実のようなので,誤解であっても他人からの評価を尊重する。

だから,現在でも所属している学会では単なる一学会員として在籍しているだけにした。

私が所属している意味がないと判断した学会については,退会した。

そして,私は,今後も,コツコツと一人で勉強と思索を重ねる孤独な研究者であり続ける。

(追記)

様々な研究論文等を求め,学術専門データベース等で検索していると,これまで知らなかった新しい学会や研究会等がどんどん設立されていることに気づく。

学会誌の発行のためには出版社と関係をもつなどの面倒な手順が必要になることがあったけれども,現在では電子出版で代用できるので,ISSN番号さえとってしまえば,どんなに権威主義的な組織によっても業績として認められ得ることになり,この点での障害が大幅に緩和されたことを一つの要素として考えることはできる。

しかし,それ以上に,従来の学会組織では「とてもやっていけない」と感ずる若い研究者が大勢存在するという事実を直視すべきだろうと思う。

古典的な権威を押し付けることは,当該学会の中では可能だが,別の学会組織を構築してしまえば,そのような権威とは無関係に自由に研究活動をすることができる。

要するに,在来の「伝統ある」学会が生き延びる道は一つしかない。

それは,単純に老害を全廃するための方策を講ずることだ。

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コメント

夏井高人様

ダーウィン流のちゃんとした意味で「進化」を定義した場合、そうなりますね。(さっきの投稿にある「劣化」とか「ミュータント」は、語弊があったかもしれませんがspoilされた、くらいの意味でお受け取り下さい。)

なお進化の単位を個体にするにしろ遺伝子にするにしろ、ミームとするんであっても、「環境は誰にでも多かれ少なかれ操作が可能」
という点に希望(?)を抱いています。

場合によってはギルド内で指摘されて方向転換することもあるでしょうが、そうでないなら、外部から突っつきあげられて方向性が変わるということもありそうだからです(後者、事例の効用は不知ですが・・・)。

かの教授からはなかなかメールが来ませんが、acute study を起こしているかが気になるところです。

投稿: 江藤貴紀 | 2014年11月16日 (日曜日) 16時01分

江藤貴紀さん

まあ何と申しましょうか・・・

外国の政府,政治団体,宗教団体,企業,特定の投資家等がバックにいる場合もあり,なかなか面倒な世界です。

要するに,金があれば多数の人々が寄ってきます。

大義というものがなく,正義感もなく,学術上の真理には全く興味がなく,しかも,論理的に思考する能力もない者は,もともと学者ではなく偽学者なのですけど,現実には,金の匂いに敏感で世渡りの上手な人が出世しますしので,世間の評価と学者としての真価とは全く関係がないと考えたほうが良いと思います。

ダーウィンの意味での進化とは,要するに突然変異が起き,その中で環境に適合した形質をもった個体が生き残るという非常に即物的なことしか意味していません。つまり,瓢箪から出てくる駒は,多くの人々にとって有用・有益かどうかではなく特定の環境に対する適応力があるかどうかだけが問題となります。そのため,たまたま特定の政府や企業にとって都合がよければ,妙な駒でももてはやされることもあります。流行の一種に過ぎないです。

本来あるべき姿勢としては,学者は,過去の偉人の如く,何百年たっても色あせない業績をのこすことを目指すべきでしょう。

投稿: 夏井高人 | 2014年11月15日 (土曜日) 08時01分

夏井高人さま

「老衰学会」も衰退していくだけなら、勝手にやっていてくれてよいと思っています。

ところが世の中には学術としては劣化しているかあるいは少なくとも人間にとって迷惑な方向にミューテーションしているのに、瓢箪から駒ではかえって何かの拍子に大きな力を持って、そのおかげで重要な政策にまで影響力を持ってしまうというはた迷惑な「認知症学会」(問題のある言い方で語弊があるかもしれませんが)も存在しますね(最近きづきました)。

何をやってる人でも、(若年性も含めて)認知症になるときはなると、自戒を込めて思っていますが・・・

投稿: 江藤貴紀 | 2014年11月15日 (土曜日) 05時24分

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