ダイレクトマーケティング
本人の事前の承諾がないのに,電話,ファクシミリ,電子メール等を用い,しつこく勧誘する行為は,ストーカー行為等の規制に関する法律に規定する「つきまとい」行為として処罰されることがある。
このことは,「サイバー犯罪の研究(六)」でも触れた。
日本国の個人情報保護法制は,間抜けなオプトアウトを基本として構成されているが,ストーカー規制法の罰則を柔軟に適用することにより,事実上,オプトインとして処理することが不可能ではない状況となっている。良いことだと思う。
なお,いわゆる「振り込め詐欺」行為等の場合の中にもストーカー規制法の適用対象とすることが可能な類型のものが含まれているのではないかと思う。
結局,現行の法制下においては,伝統的な意味でのダイレクトマーケティングのビジネスモデルは既に死滅していると考えるのが正しい。
現在適法に実施可能なビジネスモデルとしてのダイレクトマーケティングは,ベンダ等が直接に適法に取得した個人情報を保有個人データとして活用する場合などに限定されており,個人データの仲介や媒介行為等それ自体をビジネスとして適法に成立させることは難しい状況となっているのだと理解している。
なぜなら,ストーカー規制法違反行為の教唆または幇助となり得るからだ。この場合,約定により商業宣伝広告等での利用を明確に禁止していない限り,教唆または幇助の概括的・未必的故意が常に認定されることになる。
関連各社には,当該分野に精通した信頼できる弁護士とよく相談し,プライバシーポリシーの改訂を含め,ビジネスモデルの根本的な見直しをすることを求めたい。
| 固定リンク
コメント
TBUPさん
コメントありがとうございます。
日本通信販売協会が「ダイレクトマーケティング」を通信販売に限定しているとは理解できませんが,仮にそうだとしても,どのように定義するかは同協会の自由ですので,そのように定義して使用すればよろしいと思います。日本国には営業の自由がありますし,思想信条の自由もあるので,同協会がどのように考えどのように定義するのもその協会の自由です。ただし,他の人々が「テレマーケティング」をどのように理解するかも同様に全く自由ですので,お互いに禁止を求めることはできません。
このブログ記事では,一般的な英語の用語例を前提に書いています。同協会の英訳は,自由なのですが,普通の英語のカバーする範囲と比較するとかなり限定的です。同協会の定義を基本として意味を理解すると,私のブログ記事の読解としては誤読となるので,ネイティブの用語例を徹底的に調べてみてください。私は,10年以上かけて調査し研究した結果,私なりの語感を身につけました。
私のブログ記事は,日本において一般に「通信販売」として理解されているビジネスに限定して語を用いておりませんので,「日本法令外国語訳データベースシステム」は関係ありません。そのデータベースを直接に扱っている研究者とも面識があり意見交換をしたことも何度かあります。彼らは,このデータベースが金科玉条として振り回されることを一番恐れています。それをやりはじめると,英文学者や国語学者等から総反撃をくらう危険性があるし,法学者からは敵視される危険性があるからです。彼らの主張によれば,国の公式訳ではなく,訳文統一のための一応の目安として存在しているということです。しかも,日本語から英語への訳文の目安という機能しかないので,論理的にその逆が常に成立するという保証は全くありません。
以上のようにご理解ください。
なお,私は,通信販売それ自体が違法だとは思っておりませんし,Amazonなど多数の通販サイトをしばしば利用しております。しかし,名簿を利用した電子的な押し売り行為は違法行為になり,特にしつこい場合にはストーカー行為の一種として罰則の適用対象となり得ると考えています。
また,利用するサイトで「今後案内の送付を希望する」等にチェックしている場合に,当該サイトから送られてくる商業宣伝広告電子メールについても,もちろん違法だとは思っておりません。私にとっては貴重な研究資料をどんどん送ってくれるわけですし,全部保存しております。そのような資料としての商業宣伝広告メールをメールヘッダ部等を含めて徹底的に解析し,いずれその検討結果を論文にまとめ公表しようと思っております。
投稿: 夏井高人 | 2014年11月 8日 (土曜日) 11時14分
TBUPと申します。初めてコメントさせていただきます。
日本通信販売協会は、その英語名称では
「ダイレクトマーケティング」(Direct Marketing)を使用しています。
公益社団法人 日本通信販売協会【JADMA(ジャドマ)】
http://www.jadma.org/
日本通信販売協会の英文のページ
The Japan Direct Marketing Association
http://www.jadma.org/e/
ここでは夏井先生がおっしゃる「ダイレクトマーケティング」とは少し違った意味で使われているかと思います。
もっとも、「日本法令外国語訳データベースシステム」
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/
の「特定商取引に関する法律 / Act on Specified Commercial Transactions」二条2項では
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?ia=03&vm=&id=2065#ja_ch2sc1at1cl2
2 この章及び第五十八の五において「通信販売」とは、(…)
(2) The term "Mail Order Sales" as used in this Chapter and in Article 58-5 (…)
とされていて、「通信販売」=「Mail Order Sales」のようです。
よろしくお願いします。
投稿: TBUP | 2014年11月 8日 (土曜日) 10時13分