米国:ISPは捜査令状に基づく提出の命令があるときは物理サーバが米国以外の国にある場合でも命令に従い提出しなければならないとの判断
下記の記事が出ている。
U.S. judge rules search warrants extend to overseas email accounts
REUTERS: April 25, 2014
http://www.reuters.com/article/2014/04/25/us-usa-tech-warrants-idUSBREA3O24P20140425
(余談)
一般に,電子空間では,基本的に,通信接続可能なところである限り,物理的には国家主権の範囲外の土地に所在するはずの電子装置に対してもリモートで操作することが可能だ。それゆえ,電子空間では,その意味で,伝統的な意味での国家主権とは関係なしの支配が常に可能となる。
逆に,電子空間では,伝統的な意味での国家主権は,強制力や実効性という観点で,あまり意味をもたない。
特定の国(A国)が,国家主権の一部である捜査権を国外(B国)に所在する物理サーバ上で実行した場合,伝統的な法学・政治学では,A国によるB国の国家主権の侵害ととらえるかもしれない。
しかし,冷静になってよく考えてみるべきだ。
当為を基本とするのではなく,事実から考えなければならない。その上で,当為の実効性を判断すべきだ。実効性が全くない当為(実効性を全く期待することのできない当為,論理構造上成立不可能な当為の場合を含む。)は,単なる理想・理念や空想の一種に過ぎず,法規範であるとは言えない。
私のサイバー法の講義では,最近,こういう根本的な課題をベースにした講義内容を提供しているのだが,法哲学と法解釈学の基本ができていない学生に対しては混乱と不安を与えるだけとなってしまいかねないので,常に悩みながら講義を進めている。
また,このような考えをベースにしながら「情報財-法概念としての意義」という論文を書いたのだが・・・
[追記:2014年8月1日]
関連記事を追加する。
Microsoft ordered to give US customer e-mails stored abroad
ars technica: August 1, 2014
http://arstechnica.com/tech-policy/2014/07/microsoft-ordered-to-give-us-customer-e-mails-stored-abroad/
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コメント
ヤマウチ様
情報提供ありがとうございます。
投稿: 夏井高人 | 2014年8月 1日 (金曜日) 15時29分
続報:
米地裁、マイクロソフトに海外保管メールの提出を命令
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304180804580064264022405130
投稿: ヤマウチ | 2014年8月 1日 (金曜日) 13時53分