江澤和雄「わが国における法教育の現状と当面する課題」
国立国会図書館のサイトで,下記の論説が公表されている。
わが国における法教育の現状と当面する課題
国立国会図書館レファレンス No.756(2014年1月)
国立国会図書館調査及び立法考査局専門調査員議会官庁資料調査室主任 江澤和雄
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8408483_po_075603.pdf?contentNo=1
私は,普通の教育と同じような意味で「教育」として法学をとらえる限り,必ず失敗すると思っている。
少なくとも,自分よりも遙かに優れた能力を有する学生を「教育」できる教員など存在し得るはずがない。教員は,触媒として機能すれば足りるので,間違っても「教育してやる」などという傲慢な考えをもってはいけない。
教育が機能するのは平凡な能力を有する普通の学生相手の場合だけだ。そのレベルでは,司法試験に合格することも法学教授になることもできないから,専門家を育成するという意味での法学教育が成立する余地がないというべきだろう。法学の素養のある職業人を育成するという旧来の姿勢に復古すべきだと強く思う。
専門家としての法律家の養成のためには,可能な限り多額の資金を提供するということだけで足りる。あとは自分でちゃんとやる。自分のやるべきことを自分自身で開拓できない者は,そもそも法律家となるための基本的資質・能力・素養が全くないのだと考える。
一般的な定式としては,高等教育の専門家養成に関する限り,「教育論も教育学も全く成立しない」というのが真理だと確信している。
司法制度については,いわゆる司法制度改革による産物を全て廃止して旧に復するのが最も良いという私見は微動だにしない。今後も維持する。私が強く主張しなくても,いずれそういうことになるだろう。失敗だということは関係者一人残らず内心ではちゃんと知っていて,ただ,主唱者が定年に退職するまではその権力による報復が怖いから,みんな「それまでの我慢」と黙っているだけのことだ。
従来の事柄を無批判に是とし,その延長で考えることは,非常に広範囲の学問領域において,基本的に廃止すべきだと思う。根本が間違っているからだ。
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